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秋霖止まず 第五十話

「確かに、それが事実であれば票田となり得るでしょうね。

しかし、私は犯罪者としてこの国いるのですよ? いつぞやの私が民間人を盾にしようとしていたという話を未だに民間人の多くが信じています。そのような者に支持表明をする議員を、地域の住民は今後支持するでしょうか。議員は議員です。次の選挙で大敗を喫するのは嫌でしょうから、地域住民に対して私の支持など明確に言わないでしょう。民議会の私に対する評価は大統領府の会議室の内側だけにとどまるでしょう。現状、私もそうした方が良いと思います。地方民議会選挙がまた起きるような事態が発生して、そこでまた厄介な候補が出てくるのは困ると思いますし」


「縁起でも無いことを言ってくれるな。全く。票田たる理由はそれだけではない。占領下のマルタンで亡命政府であることを利用して良い思いをした人たちは少なくないのだ」


「私が贔屓目に見たのは宮廷、旧市庁舎に出入りしていた業者ぐらいなものですよ。彼らに民間人への避難命令を確実に伝えるように徹底した代わりに、亡命政府の予算でわがまま放題して高い高い商品を取っ替え引っ替え買いまくりましたから。その業者たちは私が支持表明した方へ票を投じる可能性は大いにありますね。ですが、そこまで多くの業者というわけではありませんよ。マルタンに軒を連ねる数多の店舗のほんの一部です。高級な店ではありますが」


私が冗談ぽく笑うと、ルカス大統領は呆れたように額を擦った。


「何をしてたんだか、あなたは。イズミ君のようにそう言うところで無茶苦茶するのだから。

だが、そういった君を取り巻いていた者だけが得をしていたのではない。制度の僅かな違いの隙間を縫って金を稼ごうとする者はごまんといる。商会とカルデロンによる将来の商圏獲得の為の物資搬入争いの中間に入ってマージンやリベートを取ったりな。それ以外にも、私でも思いつかないような方法をとるような輩もいた」


「そこまで考え込んでは埒があきませんよ」


「そう言う手合いはカネにものを言わせて動かそうとする。あなたを再び表舞台に引っ張り上げて、利益の為に混乱を巻き起こそうとするやもしれない」


「ならば私が権力志向だと宣伝すれば良いと思います。今回の選挙、おそらく談合の件のときからトバイアス・ザカライア商会の影がちらついていました。私が商会に権利を認めるべきと言う立場であることを示し、それとは別に支持表明を出せば良いのと思います。例えば、レアさんと握手している写真をマリナ・ジャーナルの一面に掲載させるなど、ですね」


「彼女はトバイアス・ザカライア商会を追われた身だ。今さら政治ショーに付き合ってくれるものか」


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