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秋霖止まず 第四十八話

「そんなにうまくいくものかね? 先の談合のときに出た噂は商会が流したものじゃないか。おそらく、今回の選挙でも商会が入り込みやすい状況を作り出せる手頃な候補を当選させようと暗躍してくる。元顧問団など操り人形にはぴったりでは無いか。最終的に元顧問団を当選させようものなら彼らの予定通りになってしまうのではないか? 商会は連盟政府側だ。足がかりに何をされるか分かったものではない」


「おそらくですが、商会の目的は連盟政府の政治的橋頭堡としてのマルタン市長選挙介入ではなく、自分達の商圏の再取得です。橋頭堡とするなら、もっと連盟政府に近い存在を忍び込ませて立候補させていたはずです。元顧問団など支持することはないでしょう」


「なるほど、それはそうかもしれない。だが、私はあくまで副市長を支持したい。副市長が当選すれば現状は維持される。だが、候補二人のどちらかが当選してしまったとき、我々中央は外部勢力となる。いくら中央であっても外部勢力となってしまえば大統領権限の拡大に批判が相次ぐだろう。民議会も自治は尊重されるべきだと反発する。そうなると、副市長では当たり前に行えた軍備拡張も、マルタン非武装化というマニフェストを掲げた者が当選したにも関わらず無視して行えば、権力による圧政だと強烈に非難されるだろうな」


「出来うる限り、当選はさせたくないと仰るわけですね。では、元顧問団のどちらにも私が支持を表明しているとするのはいかがでしょうか? 私という亡命政府の顔をちらつかせるのです」


「君は票田ではないのか?」


ルカス大統領は意外なことを言い始めた。

混乱して詰まってしまったが、「そんなことはないと思いますが……。何かあるのですか? マルタン在住の元難民エルフの組織票がまとまって入るかもしれないということですか?」と尋ね返した。


ルカス大統領は首を左右に振った。


「本筋から外れるが、ユニオンに戸籍を置いて永住することにした元難民エルフたちの組織票が君に入ることはない。同一住所で五年以上在住が確認が取れた者だけが投票権を有するからな。我々ユニオンが独立して、つまりその法律を定めてまだ五年は経過していないからな」


「エルフの反発を招きませんか?」


「これは難民エルフに限ったルールではない。ユニオン国内はどこも誰もそうだ。それを許せば、今後は共和国の顔色を覗った難民エルフ優遇政策だと私が叩かれる。ルールとして成立しているのだから、エルフが反発しようとも変えようが無い。それよりも、だ」


ルカス大統領は居ずまいを正し、執務机に両肘を付いてやや前のめりになった。


「最近、あなたの言動が議員の話題になっているはご存じか?」



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