秋霖止まず 第四十三話
マルタン市長は残念なことに亡くなられてしまった。捜査は暗殺未遂事件から未遂がとれ、より大規模な捜査が行われることになった。
犯人が現行犯で逮捕されなかったので、メディアにはほとんど箝口令のような報道規制がかかり、マルタン市長急死という報道だけがされた。
現在は副市長が業務を務めている。副市長は死亡した市長の腹心であり、政策方針についての差異は無かったので業務は通常通りに回っている。
だが、やはり市長という頂点が不在という事態は過敏になったいる国境の町であるので芳しくない。早速と言わんばかりに不穏な話が入ってきていた。
そのまま副市長を市長に引きあげてしまおうと言う世論が大半を占めていた。
だが、それでは世襲と変わらない、連盟政府の貴族時代の再来であり、可及的に市長占拠を再度行うべきだという意見が何処からともなく沸き起こり、準備もないまま市長選が行われることになったのだ。
急に発生した選挙戦だったにもかかわらず、候補者は三人上がった。
副市長と、ルジャンドルというコマースギルドに所属していた影の薄い男と、ギヌメールという地政学の自称専門家の女の三人の候補だ。まだ正式な告示は行われていないので、二人の顔写真は出回っていなかった。
マニフェストは三人の候補とも挙げていた。
だが、驚いたことに、副市長はまだしも、その他二人の候補のマニフェストも妙に具体的であり、有権者を納得させるには申し分ない内容だったのだ。
副市長は前市長の意思を継ぎ、マルタン市政に革新的な変化をもたらすことはなく保守的に現状維持をする。つまり、軍備をユニオン国軍に完全に任せ、国境の警備を強化するというものだ。
残りの二人はマルタン市政は豊かであり中央から自立するだけの力を持っていると主張を掲げていた。企業へのマルタン財政からの補助、新通貨旧通貨併用し同価値として扱うこと、マルタンを即時に非武装化させ両側を挟むユニオンと連盟政府の中立緩衝地帯としての機能を担うこと、などマルタンのユニオンからの経済的自立を目指していた。
自立という言葉でまとめていたが、まるでマルタンだけで国家として独立でもするかのような含みもあった。
ただの泡沫候補ではないと存在感をアピールしており、それはマリナ・ジャーナルと言った一流のメディアの取材も来たという噂も立ったほどだ。
最終章の最後を書いてるけど、戦後処理とか国のその後とかそれぞれの行く末を書いてたらそれだけで十万字くらいになりそうだから、書いてはいても載せる内容は結構省略します




