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秋霖止まず 第四十話


その日予定されていたミラモンテス氏との面会や会議は全てキャンセルとなり、事後対応に追われることになった。


まだ大統領府の建物全体が浮ついた状態が落ち着いていないような発生一時間ほどで、事件現場である大統領執務室で現場検証が行われた。

代理の執務室となった会議室で、大統領立ち会いの下、私とメイドさんたちの事情聴取が行われた。

目張りされて照明をつけなければ真っ暗な部屋の中でそれぞれに話を聞かれた。

現場にいたのは市長の他に私たち三人だけであったために容疑者としてあげられたのだ。

私は予てよりの亡命政府の件とメイドさん二人はエルフであり、風当たりは厳しかった。

メイドさんたちの証言は参考にならないと言われたが、マフレナとは別のもう一人は私との心理的な距離があるために有効であるとされた。

私は市長の最後の言葉を伝えた。彼は意識を失う直前に「商会も協会も恐ろしい」と言っていたこと、そして、意識を失う前に誰かの名前を言っていたが聞き取れなかったことまで全てを伝えた。


次の日は会議が通常通りに行われた。事件が起きたからと言って国政を止めるわけには行かないのだ。その日は本題に入る前に前日発生した狙撃事件について話し合われた。

民議会の議員の中で、いっそのこと、亡命政府の件で司法の場に立たされるというのならそれと合わせ「亡命政府が潰れたことへの逆恨み」と言うことにして私たちに責任を押しつけて全てを終わらせてしまえ、戦時だというのに問題を増やすなと言い出す者がいた。


それに乗っかるように、若手の急進派であるディヤーベオ議員は、狙撃者は何故アニエス陛下を撃たなかったのか、何故市長だけが狙われたのか、と会議の際に尋問のように私を問いてきたのだ。


「市長はマルタンを占拠されたことでアニエス陛下を恨んでいた。アニエス陛下はそれを知っていたのですか」と尋ねてきた。市長は意識を失う前に私を恨んでもいたと言っていたので、それを肯定すると「マルタン事変について、これから法的な処分が下されるのもあなた自身で理解していますね」と議員は重ねてきた。

それも肯定すると、「今の時期に誰かに恨まれていては、今後下される法的な判断にマイナスに働き、処罰がより重く課せられるかもしれませんね」と確かめるように尋ねてきた。

どうやら誘導尋問を始めたようだったので、私は黙ったまま答えなかった。

するとディヤーベオ議員は立ち上がり人差し指を私に向けて「あなたはそう考えたので、口封じの為に市長を殺害しようとしたのではないのですか。それも現場にたまたま居合わせた被害者を装ってです。今まさに、黙り答えを見送ったというのが何よりも物語っています」と背筋を伸ばした。


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