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秋霖止まず 第三十一話

イルジナは、言葉を発する度に大きな反応を見せる大統領を見て楽しんでいるのではないだろうか。マルタンで色々と動いてくれたので、彼女のことはよく知っているつもりだが、少しばかりサディスティックな性格なのだ。

だが、嘘がまことしやかに流れているのにはうんざりしていたので、彼女を止めないことにした。もう少しだけ狼狽して貰おう。


「アニエス陛下の事実を大統領ご自身が直々に公表しなければ意味がありません。大統領が言われた後でなら、大統領に関する正確な情報をお流し出来るのですが。現状で私たちが何か言ったところで、誰も信じはしないので」


「待て、待て」額に叩くように掌をこすりつけると、「アニエス陛下の正しい情報とは何だ?」と慌てるように尋ねた。


「民間人の避難を誰よりも率先して行ったのは陛下であり、民間人を盾にしようとしたのは顧問団たちであること、エルフの顧問団二人を手にかけたのはルクヴルール軍事顧問であること、ギヴァルシュ政治顧問が中心的に行っていたウリヤ・メレデント執政官に対する虐待行為について、以上三点でございます」


「それはミラモンテスから聞いた話とは真逆なんだ! 彼が嘘をつくとは思えない!」


「残念ながら事実です。私たちはマルタンの市庁舎で起こったことをこの目を通して全て見ておりました。そして、メイドコミュニティにて情報も逐次共有しております。メイドコミュニティにいる者たちは皆真実を知っています。ご存じかと思いますが、メイドや使用人、そのコミュニティに参画している者たちの情報は嘘ではありません。嘘を絶対につかないというのが参画の資格の一つであり、嘘をつかなくても済むように、そして、より話をしやすいように、互いを守るような組織です」


「それではコマースギルド代表を信じている私のコミュニティからの評価は最悪ではないか!」


「ご安心ください。メイドコミュニティはあくまで民間の団体であり如何なる政府にも属しておりません。従うべきは主人のみ。大統領が主人の主人とはいえ、大統領の評価などしてもいません。

それから、大統領の使用人がコミュニティに参加できないのは優秀か否かではなく、存在が極めて政治的である為に自らの意思で参加していないのでしょう。彼ら彼女らを責めるようなことはしないでください。

私たちのコミュニティの情報によれば、ミラモンテス氏は強烈なエルフ嫌いで有名ですね。氏の邸宅でお世話をしていた人間のメイドが日々言っておりました。素晴らしい経営者であり悪い人ではないのですが、エルフに対する扱いはどうも目に余るものがある。あれさえなければ、と。ミラモンテス氏は以上の理由により、エルフを嫌悪する組織と普段からつるむことがほとんどなのでしょう。ミラモンテス氏本人が嘘をついていなくとも、エルフ嫌いのバイアスのかかった話ばかりを聞いて、それを信じていたのでしょう。私たちの見解では、氏は嘘をついていないかと思われます」


「なぜそこまで言い切れるのだ?」


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