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秋霖止まず 第十五話

その日、会議が始まるとルカス大統領は書類に目を通した。しかし、一ページ目をめくると、何やら渋い顔をしたのだ。一ページ目にはイズミさんの今後についてを話し合う為の資料がある。タイトルと数行の情報(フルネームと年齢とこれまでの行動について)位しか書かれていなかった。


「おはよう、諸君。早速始めようか。あー、まず、最初の議題についてだが、あー、何だ。これは後回しにせんかね?」


会議にいた者たちは自らの発言を回避せんとするかのように大統領から視線を逸らし、誰も何も言わなくなった。


「あの、大統領」と私は呼びかけた。


「私が言える立場ではないのですが、帝政思想(ルアニサム)の件もあります。移動魔法を使える者がユニオンに二人もいる状況を快く思わない地域も出てくると思うので、イズミさんについての結論は早めに出しておいた方がいいのではないでしょうか」


「それもそうなのだ。だがなぁ」


向けられていた視線が四方に飛び散り、ルカス大統領はとりつく島もなくなったので、うーむ、と顎を弄り始めた。


「イズミさんはユニオンに戸籍が置かれていると言っていました。私は責任追及の観点からまだルーア皇帝という立場を放棄していません。北公には戸籍がありましたが、脱走兵扱いのはずです。決して安定した立場が欲しいというわけではありませんが、ある程度地に足を付けておいた方が議論はしやすいかと思います」


ルカス大統領はまだ渋い顔をしている。


「恐れながらお伺い致しますが、何か、話を先送りにしたい気がかりなことでもあるのですか? 私はイズミさんの内縁の妻です。皇帝の一件がなければ、世界情勢を見てユニオンで籍を入れると言う話もしていました。その件でもやはり移動魔法が使える者が二人いるという問題があるとも言っていましたが、もしかして何か関係があるのですか?」


「そうではないのだよ。確かにそれについて、我々ユニオン側としては喜ばしい話ではあるが、色々と考えなければいけないこともある。イズミ君の意識が戻ってからもう少し具体的に聞きたいのだよ。だから……」


ルカス大統領の言葉に会議室にいた者たちがびくりと肩を上げると、一斉にルカス大統領の方へ振り向いた。


「ちょっと待ってください。意識が戻ってから? それどういうことですか?」



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