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秋霖止まず 第十四話

顧問団たち――ギヴァルシュ政治顧問、ルクヴルール軍事顧問は生死が判明していない。おそらく彼らはどこかで生きている。蓄えた金を抱えて隠れ潜み、のうのうとその身に受けた傷を癒やしているのだ。


捕虜たちの住環境について、受けた報告の範囲内では問題が無かった。だが、千人近い捕虜を養っていくのはユニオンにとっても負担であることは間違いない。

収容所敷地内で農作業などを行わせ、ある程度の自給自足をさせるべきという提案はすぐに受け容れられた。動機付けとなるかは定かではないが、彼らが作った物を私が食べることになるとも伝えることにした。


ウリヤちゃんについて、彼女はメレデントの名前を使われただけであり、執政官という立場も顧問団たちが責任回避をする為の看板でしかなく、政治については一切何もしていなかったことを伝えた。

それはルカス大統領も分かっていたようだ。重い罰を与えることはしないが、責任はとらなければいけない。名前を持っていることで今後また利用されることを警戒して(ルカス大統領は直接口には出さなかったがウリヤちゃんの身を案じ)、ウリヤ・メレデントはマルタンでの一件で心を病んだ末に持病が悪化し手の打ちよう無く、最後は苦しんで病死してしまったことになった。それに伴って、かつてメレデント元民書官が亡命予定時に共和国から持ち出していた共和国の戸籍は完全に抹消されることになった。そして、シルベストレ家の娘と言うことで名前をウリヤ・シルベストレと変え、これまでの十数年間ずっとシルベストレ家の娘として生きていたことになっているユニオンの戸籍を与えられることにした。


ウリヤちゃんはメレデント姓を無くすことに不満を漏らした。自分と言う存在その者が亡きメレデント氏の唯一の形見であり、守るべきものだと思っていたので、名前を変えることでたった一人の家族だった祖父が消えてしまうようで嫌だったそうだ。しかし、ヘマさんがウリヤちゃんを説得してくれた。

ウリヤちゃんは誘拐の際にヘマさんに身を挺して庇われたので、その新しい家族を再び危険な目に遭わせることなく安全に静かに生きることを選んだのだ。

こうして、ウリヤ・メレデントは夭折、メレデント家は思想と共にその長い歴史を閉じることになった。


学も常識もあり、その上かなりの魔法の素質を持つことで、今後モンタルバンに新設される予定の魔法学校に入学が決まった。しかし、それまでに人間の常識や作法、それから魔法を正しく扱う方法を学んでおくことになった。

新設されるのはまだ先であり入学までの大事な期間を無駄にするわけにはいかないので、魔法は私が教えることになった。皇帝と執政官が再び接近するなど警戒されるかもしれないが、執政官だったウリヤちゃんはこの世にいない。私はウリヤ・シルベストレの家庭教師なのだ。それにより、移動魔法での移動許可地点にシルベストレ家の敷地内が追加された。


それから一週間ほどしてから、やっと私はイズミさんの名前を聞いた。

彼の今後をどうするかも協議されるのは必然であったが、なかなか議題に上がることは無かったのだ。

だが私が聞いたのは最悪の話だった。


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