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秋霖止まず 第十一話

一見逃走手段として無敵に見える移動魔法。だが、それを使える者を拘束するのは不可能ではない。

現在の居場所を把握させなかったり、第三者の移動魔法により被拘束者にとって自力での未踏である場所に放り込んだりすれば、移動魔法を封じることで拘束することが出来る。


だが、現在の居場所を知る方法はいくらでもある。例えば、気温、音、配膳係の服に付いている物、その他諸々に判断材料はある。よって時間の問題である。もう一つの未踏の場所というのも、本当にかつて訪れた経験がないのかというのは、本人でもはっきりと言えない可能性もゼロでは無い。物心付く前に来ていたことあったり、気を失っている間に来ていたり、ただ単に来ていたことを覚えていなかったりと、本人でさえも未踏をその場で否定できないこともあるのだ。


もし来ていたことがあると、極めて感覚頼りではあるが、頭の中で点と点が繋がるような、朝目が覚めたときのようなはっきりとした感覚ですぐに分かるのだ。


そのようなこともあり物理的に抑え込むのは簡単ではない。だが、方法は確実にある。

そのどちらも無理であるならば、精神的に抑え込んでしまえば良いのだ。例えば人質と言ったような。

それは、人によっては物理的に抑え込むよりも強固に捉えることが出来る。人によると言っても、普通の感性の持ち主だったり、何かの使命を負っていたりしなければ、誰であっても使うことなど出来ない。


私はマルタンの丘陵地帯からラド・デル・マルまで、カミーユさんのマジックアイテムを介して移動した。ここラド・デル・マルからはノルデンヴィズなどにはポータルを開けず、かつて観光して歩き回ったところにしか開くことが出来ない。それでも逃げようと思えば逃げられるが、私は逃げない。人質がいるからだ。今の私にとっての人質はイズミさんだ。


大統領府で黒塗りのセダンに乗せられて、数台のダミーセダンと護衛車でぞろぞろとラド・デル・マルのメインストリートを走り抜けていた。私が通ると言うことで、ケーブルカーも一時的に運休になった。

しかし、途中で私が載っていた車は一台だけ車列から離れて別のルートで辿り始め、そして着いたのはブエナフエンテ邸宅の裏口だった。ここが滞在先となるようだ。

高級ホテルよりも警備を配置しやすく、ブエナフエンテ家の使用人が多くいる為に監視も行き届くのだろう。

運転手の取り合っていた連絡が聞こえた。どうやらダミー車はラド・デル・マルの高級ホテルに同じ頃に到着し、高い三脚の上から降り注ぐメディアのフラッシュ、野次馬の洗礼、考え方の偏った団体のシュプレヒコールや暴言や投げつけられるプラカードを浴びて徐行しながら駐車場へと入っていったらしい。

一方の邸宅裏口は静かで、木が風に揺れる音が聞こえていたほどだった。



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