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秋霖止まず 第十話

おそらく、ここで真実を言おうと言うまいと私が責任を取ることに変わりは無い。あの顧問団たちはあくまで顧問団。私より権限を持っていたとしても、立場は下なのだから。


「うむ、よろしい。では、君と君の兵士や市民をこれからどうするかについて考えなければいけない。現場では一段落が付いたようだな。まだ事態が収拾しきったわけではない。これから大変だが、よろしく頼むぞ」


ルカス大統領は答えるように頷き、椅子を戻して咳払いをして居ずまいを直した。

打ち切ろうとしたルカス大統領に食いついた。


「ところで、イズミさんはどこにいるのですか?」


「残念だが、それをお伝えすることは出来ない。あなたは国家的犯罪者であることを念頭に行動して欲しい」


「無事なのですか?」


「イズミ君に関しては安心したまえ。ユニオンの治療施設に送られた。そこは共和国の医療技術を取り入れているので高度な治療を受けられる。死ぬことはなかろう。我々も死なれては困る」


無事とは言わなかった。


「ウリヤちゃんはどうなったのですか?」


「ラド・デル・マル空軍基地に先ほど到着している。ティルナのおかげだな。疲労困憊の様子だったが問題はない。ヘマがシルベストレ家の自宅に連れて帰ることになった。当然だが監視付きだ。彼女も幼いとは言え、執政官という立場に就いていたからな。今後、ややこしいことになるかもしれない」


亡命政府軍の兵士たちはどうなっているかと尋ねようと口を開いたが、声が出る前にルカス大統領は右掌を前に突き出して見せてきた。


「尋ねたいこと、気になることは山ほどあるだろう。だが、今質問は無しだ。現場の収拾は付いたが、調査と後片付けがある。そして申し訳ないことに、私自身も把握していないことが多すぎるのでな。

これからしばらくユニオンで拘束させてもらう。君は唯一流れたスピーチの際に『共和国への亡命』を宣言したが、ユニオンに逃げてきたのだ。マルタンはユニオンの土地であり、そこで犯した罪はまずはここで裁かれてもらおう。共和国への移送を含めた対応はそれからだ。重罪人であるとは言え、そうなるに至るまでの過程を考慮すれば、酌量の余地はある。マルタンでの一件はそこまで追求されることはおそらくなく、共和国への移送は早い段階で行われるだろう。だが、勾留中に石造りで小さな格子窓のある牢獄に放り込むようなことはしない。一応にもまだ皇帝だ。革命によってその座から引きずり下ろされたわけでもないので、そのようなところに閉じ込める道理もない。どこかに滞在していただく。

街への外出は禁止だ。移動魔法は滞在先と大統領府への往復以外での使用は禁止だ。共和国と過度速移動者情報共有条約が締結されて、君に限らずだが誰かが移動魔法を利用した情報は五分以内に共有されることになっている。それはもちろん国外へだけではなく国内での移動の際も適応される。皇帝であることの自覚と自負はある君の場合、逃げはしないだろうが、使ったのはすぐにバレるぞ」


ルカス大統領は口角を上げて軽く笑った。


「寛大な処置に感謝致します」


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