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秋霖止まず 第八話

イズミさんは宣言と同時に私を庇わなければいけなかったということだ。

そのタイミングを計る為に、イズミさんにもスピーチが聞こえていなければいけなかったはずだ。


宣言が放送されていないというまたしても妙な事実に意表を突かれ、黙り込んで眉をしかめてしまった。私でもイズミさんでも顧問団でもユニオンでも共和国でもない、大きな第三者がいるのではないかという、何か様子のおかしさを感じると妙に冷静になってしまった。

それからも続いたルカス大統領の話に耳を傾けた。


「民間人を盾にするという言い方が悪かったのかもしれない。確かに現場に民間人がいれば我々の行動は鈍っただろう。だが、君は自分の立場とすることをよく考えるべきだ。エルフの国の皇帝ともなる者が演説などすれば、今の世ではどこも軍を動かすのは当然だ。しかし、君は皇帝であったとしても、素人だ。そういった治政面において、ある程度は顧問団に任せてもよかったのではないか。彼らは君と違って政治的に素人ではないのだから。それに彼らがどれほど連盟政府に傾倒しようとも、我々はマルタンに軍事的介入をするのは確実だった。

何れにせよ、今回被害はなかった。しかし、君は皇帝だ。簡単に良しとは出来ない。ありとあらゆる責任の所在はいずれ君の元に回ってくるだろう」


「承知の上で私は皇帝になりました。ですが、お願いがあります。亡命政府に手を差し伸べた者たちに寛大な処分をお願い致します。命を差し出せと言うのであるならば、それは仕方が無いとも考えております」


僅かな間だがやや思考が別の方向に向いたことにより冷静を取り戻していた私の予想外に落ち着いた返事に、ルカス大統領は少し驚いたようになった。


「イズミ君や自らの身を案じるのではないのか?」


「イズミさんが願った平和を叶える為に私は権力の座を求め、就きました。命一つで平和が訪れるなら」


「立派ではあるな。しかし、やはり素人の考え方だ」


ルカス大統領は椅子にもたれて腕を組んだ。


「自分一人が死ねばいいなど甘いにもほどがある。遺されたイズミ君はどうするのだね?」



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