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秋霖止まず 第七話

「市街地に民間人がいれば戦闘行為がしにくくなる。その方が確実だと」


「そんな!」


顧問団がしようとしていたことを私がしたという、事実とは異なることがまことしやかに語られているようだ。

マルタンでの亡命政府についての責任は全て負う覚悟はあった。しかし、それだけはどうしても認めることが出来ない。

怒りを覚えて声を荒げたが、ルカス大統領は意にも介さず話し続けた。


「顧問団たちは確かに、あぁ、下品な言い方だがクズだったな。それは私もよく知っている。諜報部から重ね重ね聞いていた。だが、その顧問団がまともに見える。顧問団たちが民間人の避難を皇帝に必死になって説得したのだとコマースギルド代表は言っていた」


まるであべこべだ。民間人を盾にすれば軍事行動がとりにくいからと体の良いわけを着くって、自分達のみの安全を図ろうとしていのは顧問団だ。私から権限を奪い取って、それだけは皇帝の仕業にしようというのか。

今さらだ。私がそういうことを言い出したから権限を封じたと、後から好き放題に言える。

許せない。


「そんなはずありません! 何故そんな簡単にその人の話を信じたのですか?」


「そのコマースギルド代表は私の知人でな。私がブエナフエンテ家を継ぐ前から知り合いだった。まぁ幼なじみと言って差し支えないだろう。彼はイスペイネ系ではないが、マルタンでは名家でな。些か、エルフに対して良い感情を持っていなかった。それ以外は私とは意見が一致していたな」


「それは逆です! 私が避難すべきだと指摘しました。それでも顧問団たちは話を聞くことはなかったです。直接伝えようにも、私は市庁舎から出ることを許されなかったのです。そこで、メイドさんたちを通じて全てを伝えたのです!」


「顧問団たちに随分酷いことをしたそうだな? 風の強い市庁舎の屋根に放置したり、地下牢に閉じ込めたり。どちらも一時的とは聞いていたが、命に関わるかもしれない」


「そ、それは……」


亡命政府幹部クロエと結託していたとき、私は暴君たるために、言うことを聞かせようとして顧問団たちにそのようなことを何度かした。怪我をさせたり、死に至らしめかけたりはしていない。もちろん、安全を考慮した上でしていた。

首を後ろに下げて息をのんで黙ってしまった。些かやり過ぎたときもあったのは事実であり、言葉が詰まってしまった。

ルカス大統領は呆れるように鼻から息を吐き出した。


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