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秋霖止まず 第六話

「どうやら一段落付いたようだな。さて、アニエス陛下」


名前を呼びかけてルカス大統領は頭を掻いた。


「……いやどうも陛下と呼ぶのは違和感があるな。イズミ君から色々と聞いていたし、君自身も人間で元は遙か北にあるブルンベイクの村娘だったのだろう? バカにしているわけではないのだが、どうも陛下と呼ぶには親しみがありすぎてな。それはまぁ良いとしよう。たった今、マルタン市街地の収拾が付いたそうだ。市街地に展開していた我が軍と共和国軍の合同部隊本部から連絡が入った」


「市街戦をしていた亡命政府軍の兵士はどうなったのですか?」


「安心したまえ。兵士はほとんど無抵抗で降伏してくれた。一部では、どちらにも属さない所属不明の部隊と共闘し追い払ったそうだ。負傷者も順次回収している。あなたのおかげですぞ。エルフたちにとって皇帝という力は絶対というのは驚きだ。もう少し抵抗があることを想定していたが」


ルカス大統領は大きくため息を吐き出した。


「しかし、民間人の避難が全て済んでいてよかった。これで避難が遅れていたら、どうなっていたことやら」


「軍の方に負傷者は出てしまいましたね。私の力不足です」


ルカス大統領は私に言葉に違和感を覚えたのか、眉間に皺を寄せて小首をかしげた。


「その言い方では矛盾があるように思えるが?」


その仕草は困惑しているだけではなく、怒りも少なからず含まれている気がした。


「軍に負傷者が出るのは仕方が無い。軍人である以上、戦うことが仕事だからな。だが、民間人の負傷者はあってはならない」


「それは当然です」


その返答にルカス大統領は私を睨むようになり、はっきりと表情に怒りを乗せた。


「では何故あなたは民間人の避難をさせなかった?」


ルカス大統領が何を言っているのか、理解することが出来なかった。民間人の避難を強制したのは私だ。メイドさんや出入りの業者を経由して情報を流した結果、民間人全員の避難を成功させることが出来たのだ。

しかし、ルカス大統領は私は民間人の避難の避難に関与していないかのような反応を見せたのだ。


「そんなはずはありません。私はメイドさんやエルフ系の従業員たちを通じて街の住民に今日の出来事を全て予め伝えていました」


「避難しろとは言わなかったんだな?」


「いえ、確実に避難しなさいとまで伝えました」


「嘘をついてはいかんよ。いくら皇帝といえどもな」


ルカス大統領は瞼を押さえた後、首を左右に振った。


「マルタンの商業コミュニティであるコマースギルドの代表から話を聞いたが、皇帝は、つまり君は宣言の日に民間人を置いて盾にしようとしていたらしいではないか」



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