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秋霖止まず 第三話

「当たり前だろ。何言ってんだよ。あんたは大犯罪者で、亡命政府は負けたんだ。さっさと開けよ。これ以上死人が出たらアンタの責任だからな。さっさとしないとコイツも死んじまうぞ。怪我人がこんなたくさんいるの分かってんだろ? さっさとやれよ、亡国の女王様。これから捕虜で済むと良いなぁ」


そう言うとニヤニヤ笑い出し、担架を傾けてイズミさんを落とそうとしている。

慌てて手を伸ばして支えようとすると、背後から「いい加減にしなさい!」と怒鳴り声が聞こえた。

振り向くとカミーユさんが駆け寄ってきて「衛生兵、名乗りなさい」と怒鳴った。

血相を変えて向かって来たカミーユさんに衛生兵は良い笑顔を向けて「自分は衛生兵補佐のむにょむにょンです。敗残兵の人道的処置をしています!」と誤魔化すように名前を言った。怒鳴られて自分のしていることに後ろめたさを感じ始めたのだろう。だが、カミーユさんはその衛生兵とは目を合わせておらず、階級章の下に刺繍されている名前を見ていた。

「あなたはもう結構です。どきなさい。人数が多くないとはいえ、あなたのような衛生兵は補佐でなくとも必要ありません」

と言いながら肩の衛生兵を示す階級章を名前の刺繍ごと引きちぎった。


「低級治癒魔法が使えるだけのただの二等兵予備、戦うことさえも出来ないならそこでボーッとしていないでさっさと荷物運びを手伝ってください。いくら重営倉送りの兵士でもそれくらいはできるでしょう。もし荷物も運べないようなら、せめて他の兵士たちの邪魔をしないでください。

あなたは政府高官のところにアニエス陛下と伴って出向き、サボるか、あわよくば媚びを売ろうとしていたのは分かっています。ラド・デル・マルまでのポータルは私が開きます。ティルナから移動魔法のマジックアイテムを預かっていますので」


今や二等兵の元衛生兵は舌打ちをすると、わざとらしく投げ落とすように担架を両手を手放したが、後方で運んでいたもう一人がうまくバランスを取り、イズミさんを頭から落としてしまうことはなかった。

カミーユさんがすぐに手を伸ばして担ぎ上げた。

元衛生兵は「ンだよ。敗北した犯罪者のくせによぉ。調子のんなよ」とぶつぶつ言いながらさらにユニオンと協会が陣を張った敷地の後方へと歩いて行った。



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