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共和制記念病院にて 第八話

マルタン市庁舎のバルコニーでスピーチの終了とともに狙撃されるはずだったアニエスを庇ったとき、俺はバルコニーで撃たれた。その直後、すぐに動かなければいけないと思い、杖を傷口に突っ込んで焼灼するという、むちゃくちゃな止血をした。いくら興奮状態で痛みが弱まっていたとしても、今思い起こせば寒気がするほどとんでもないことをしたと感じる。あれで止血は出来たが、どうやら身体にはダメージが入ってしまったのだろう。


「俺は何も出来ないのか……?」


事態は急展開。制限時間が出来た。

それなのに、魔法が半年は使えない。俺は完全に魔法頼りだった。

鍛えれば強くなると言われて、鍛えて使い込んで、もはや自分の物にしていた。そして、こうして失って始めて、俺はそれだけに依存していたことに気づかされた。

確かに魔法は便利だ。何から何まで、自分の思いつく範囲でなら出来ないことは無くなった。だが、それは当たり前なだけの奇跡であって、いつなくなってもおかしくないことを忘れていた。

半年経てば魔法は使える。だが、その半年の間に世界はどうなるのだ。


「落ち込むなよ。何も出来ないわけじゃないが、私の判断でドクターストップだ。私はドクターでなくてプライムミニスターだがな。何も出来ないことばっか考えんな。お前のしてきたことはたくさんあるだろ? 私らもこれまで、何かあればお前を呼び出して移動魔法でこき使ってばっかりだった。お前、何の躊躇いもなく使ってくれたじゃねぇか。いつまでもそれにあやかってるわけにもいかねーってことだ」


魔法がない、杖が側に無いことによる虚無感と手足をもがれたような恐怖は次第に乾き始め、心拍は上がるが血圧が下がるような、気持ちの悪さに襲われた。

ユリナの言葉も遠くで誰かが喋っているような、くぐもって聞き取りづらく、何を言えばいいのか分からなくなった。


ユリナは肩に手を置くと、握るようにして揺らした。そして、覗き込むようになると「なぁ、お前さんはよく頑張ったよ。ホントに」と眉を下げて口角を上げて哀れむような顔をした。

まだ終わりなはずでは無い。ここで終わってはいけないんだ。


「ふざけんなよ。そんな、もう終わりみたいに言うんじゃねぇよ」



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