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共和制記念病院にて 第六話


金融省長官選挙の際に、メレデントの手のものから銃撃を受けて左肩に被弾した。大事には至らなかったが、出血量は少なくなかった。治療をしたときに輸血をした。

その後も俺は何の問題なく魔法を同じように使えていた。弱くなったり、コントロールを失ったりと不自由をした記憶は全くない。


「そのときとはレベルが違うんだよ」と顔の前で右手を左右に振った。


「出血量がな。でも、今魔法が全く使えないっつーわけじゃない。お前の左手」と言うと顎で左腕を差した。


「それマジネリンプロテーゼだろ?」


そうだ。これは魔力で動く。今も普通に動いている。これは自分の魔力で動く物だ。魔力が無ければ動かないはずだ。これが重たく感じるのは、身体の方がまだ弱り切っているからのはずだ。


「重かったり、動きが鈍かったりしないか?」


思っていたことをそのまま指摘され、心臓が一度強く打った。

ユリナの言う通りずっしりと重い。力を込めて大きめの石を持ち上げるような感覚に近い。指の動きも思った通りには動くが、頭で出だした指示よりも少しばかりタイムラグがあるような感覚もある。


「マジネリンプロテーゼってのを考えたヤツァ天才だな。それってのぁ、ユニバーサルなモンだ。魔力を持たない者は魔石で、魔力のある者は自分の魔力で動かせる。加えて、使う魔力量は多くないんだよ。それこそ、どこの家の炊事場にある火を付ける為の小さな魔石くらいなモンだ。それが重いって感じるってことがどういうことだか、分からないわけないだろ?」


「なんなら魔石を付ければいいじゃないか」


「無理だ。無理だった」とユリナは首を振った。


「それ、特注品なんだろ? 魔石が必要なタイプなら、それのためのスペースが確保されてる。お前にわかりやすく言うなら、玩具の電池入れみたいな感じだな。だが、お前のは魔力術者依存型でそんなモノはない。私らもそれを考慮して、ちょっと診させて貰った。だが、あんまりにも高度で細かいモンだから、こっちじゃ改装は不可能だってことになった。アスプルンド博士ってのは、どんな天才なんだよ。人智も何もかも超えちまってる。こっちとの技術発展の差をありえねぇ勢いで埋めてやがる」


「おい、嘘だろ。じゃ俺はもう魔法使えないってことか?」


考えないようにしていた恐怖を口に出してしまった。そうではないだろうかという、恐れ故に、口にすることさえできなかったそれを言葉にしてしまったのだ。

自ら言葉にすることで更なる恐怖が襲いかかってきた。


「いや、それはありえねぇんだ。戻る」とユリナは間髪入れずに否定してきた。否定してくれたのだ。

落ちていく底の無い穴が黒々とまだ広がっているのではないかと身体の中が張り詰めるような緊張感が刹那に身体を通り過ぎていった。その後の安堵は時間が無いと分かっていても、気を緩めてくれた。

しかし、自分だけがそれを恐れているわけでは無いような即答ぶりをユリナはしたのだ。


「そりゃお前、人間は代謝するんだぜ? 血液を自分で作り出すんだから、半年かそこらで元には戻るさ」


「半年!?」と声が裏返ってしまった。一度は安堵したが、再びとてつもない焦燥感に襲われた。それは先ほどとは違い、はっきりとした形を持っていた。


「そんなに休んでたらこの世界どうなっちまうんだよ!?」


「そうだな。考えたくもねぇ」


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