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共和制記念病院にて 第四話

ユリナの言葉は分かった。だが、理解は追いつかずに何を言えばいいのか分からなくなった。

眉間に皺が寄り、首が左右に答えを求めて動いてしまうのを止められない。

形の無い焦燥感が、胸腺か食道か、その辺りが沸騰して泡のように湧き上がってくる。


俺の同様による硬直など無視するかのように「ついこの間の話だ」とユリナは書類から視線を上げて俺を見て話を始めた。


「北公とユニオンを正式な国家として承認すると同時に、現地で圧政を受けている連盟政府の人間を解放する為、友学連はユニオンによって軍事的に支配され不当な搾取を受けていて、それを解放する為、ルスラニア王国は国として認めてはいないが、北公によって一方的に分断されたブルゼイ族の『兄弟』を解放する為だそうだ。ルスラニア王国に関して言えば、お前も、まぁ色々だ。

民族紛争に『兄弟』なんて単語出したら、あと数百年は泥沼化するのがもう決まったようなモンだな」


「おい」


話を聞くにつれて理解が追いついてきた。それに合わせて、脇腹が冷たくなり、動悸が起こり始めた。呼びかけたがユリナは無視をした。


「混乱するのは分かるが、もう起きたものは仕方が無い。ユニオン、友学連、北公、ルスラニア王国、それから私ら共和国の外交努力も虚しく、な。言うなれば、世界大戦だ。こうなれば暴力で決着を付けるか、ぶん殴るだけぶん殴って相手を弱らせてから話し合いの場を設けて妥協点を引きずり出すか、どっちかしかないな。残念だが、後者はまだ先だろ。今は始まったばっかでお互いにかっかしてるみたいだからな。連盟政府は時代遅れとはいえ、魔法の脅威は凄まじい。知っての通り、諜報部は優秀。参ったモンだぜ」


「おい!」と再び強くやっと遮ることが出来た。ユリナは「あんだよ?」と鬱陶しいものを遇うように答えた。


「被疑者招致詰問なんかしてる暇じゃないぞ!?」と分かりきったことを尋ねるように睨みつけたが、ユリナは全く表情を変えない。


「いや残念だがするぞ。詰問はすぐに終わらせて私らはさっさと帰るが、お前だけ指定された時間はきっちりとらせて貰う。厳格にやるとは言ったが、所要時間以外は形だけだ。なぜなら、お前には休息が必要だ」


「ふざけんな! 休んでる暇なんか無い! 俺は平和をもたらす為にあちこち行ってたんだぞ!? こんなんでも戦地に行けば衛生兵くらいは出来る!」


ユリナは「いや、出来ないね」と即答し、持っていた紙を人差し指と中指で摘まみながら扇ぐように揺らした。


「足腰でリハビリが必要なら何とかする! だからすぐに情報を教えろ!」


ユリナはそれでも首を左右に振るだけだった。


「なんでだよ!?」


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