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驟雨の幕間 第三話

女神は立ち上がると両手を天に掲げ、

「私はシバサキに力を上げて、ドミノの最初の一枚を押しただけ。何度も止まりそうになったけど、あと何枚か先では同時に何千枚も倒れることになるわ。もう止まらない。あなたがその間の何枚かを抜き取ったとしても、もう止められないわー。

もうアレスたる者は充分に揃ったのー。その人たちが大きな戦争を起こしてくれれば、そこにあなたの捲いた愛が芽吹いて、やがてハルモニアが生まれるわー。そう、調和が訪れるの」

と壮大なことを言い始めた。


「訪れるのは調和(ハルモニア)であって平和(エイレーネー)ではないんだな」


水を差されたように勢いよくこちらを振り返ると舌打ちをした。


「あなた、ムカつくわね。ハルモニア知らないくせにエイレーネーなんか知ってるのよ」


「エイレーネーもあんたの従者だか身内だかだろ?」


「ゼフィロスに乗ってキュプロス島に着いたとき、私に服を着せた三女神のうちの一人ね。その後、醜いヘパイストスと結婚させられた」


「別々にあるってことは同じじゃないんだよ。平和(エイレーネー)は争いが無い状態。調和はバランスが取れた状態。争いがないとは言っていない。正義(ディケー)秩序(エウノミアー)も別々。

競り合いにしろ何にしろ、世界の調和って言うのは権力者にとってバランスが取れてるってことなんだよ。大きいにしろ小さいにしろ、どこかで争いが起きて、それが回り回ってその権力者たちのためになってるってことだろ? スズメバチが養蜂家のセイヨウミツバチを襲うからニホンミツバチが絶滅しないのと一緒。自然界における人間という権力者の為のバランス」


「屁理屈ばっかねー。シバサキはそういうところ何にも考えてないから使い安いんだけどー。私がシバサキの肩を持ってるから悪役なワケで、それでアンタは何言っても反抗したいだけなんでしょー」


確かに、それはあるかもしれない。

しかし、何が何でも何か言い返してやろうとして身体を起こし鼻息を吸い込んだが、何も思いつかなかった。

調和と平和は違う。ここでその二つの違いをあげつらっても、ただ反抗したい一心で思いついたその場だけの屁理屈でしかない。先ほどの自分の発言がまさにそうだ。


俺は争いのない平和を目指すという目標を掲げていながら、まだほとんど前進がない。それどころか、世界は争いの渦をさらに大きく深く速くしていっている。


共通の圧倒的な強敵が出現すれば、争いの全てをその敵に向けるので人間同士エルフ同士の争いはなくなるだろう。

それならばいっそのこと、自分がその強敵になれば良いかもしれない。



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