裏切りの代価 第六話
クーデターを起こさせたのは全て私である。もちろん、私自身が国家転覆を狙ったわけではない。帝政ルーアの亡霊をまとめて祓う為だ。
クーデターを起こすような輩を煽り、順調そうに話を進めさせて、そして実際に起こさせる。
国家転覆を起こそうとする輩は大体勇み足だ。順調であればあるほどに結果に飛びつこうとする。
クーデターを起こした者たちはあまりの順調さに疑うことを知らず、これはもはや勝てるのではないかと錯覚させれば、そいつらの中からこちらへ掌を返すような奴は出てこない。
敵側、クーデターを起こす側に掌を返すような奴を出させない、というのはこちらが取りこぼしをしない為だ。雑草の千切れた根っこから再び繁茂するのは、防がなければいけない。
諜報部は優秀だ。情報など全て把握している。裏切って提供してきた情報など、信憑性も低い上に絞りカスでしかない。
勝ち馬が相手だと錯覚して、逆にこちらを裏切る者も出てくるだろう。
繰り返すが、情報は全て把握している。裏切りそうな奴など、顔に書いてあるのだ。
まさかコイツが、というのは絶対にない。まさかと言わせたいのなら、フラメッシュ大尉にホンモノの設計図を持っていかせるぐらいはして貰わなければ。
だが、それはそれで利用価値がある。こちらが有利になる偽情報を思い切り与えてやればいい。
相手は増長、全てを知るこちらは作戦を有利に進められる。
Win-Winではないか。最後は勝つのは私だが。
「ちなみにフラメッシュ大尉からお前らの仲間の顔と名前と住所などなど、個人情報は全て報告を受けてる」
隊長殿の右後ろにいる中年の警備隊員を指さして「お前」と呼びかけた。
指を差された中年は驚いたようになった。
「娘さんが五つくらいか? お父さんがなんでおうちにいないのか、墓の前でかみさんに説明させたいか? まぁ大人しく捕まれば殺しゃしねぇ。大学の入学式くらいにゃ出席させてやるよ。私も同じくらいの娘がいるからなぁ。子どもを泣かせたくないぜ」
今度は反対側にいた若い男を「そっちのお前、若いそばかすの」と指さした。
「あのカワイコチャンの彼女とは、クーデター前に籍入れとくべきだったな。共和制記念病院の看護師はモテるぞ? ムショから出る頃には他の男と子ども作ってるだろうよ。残念だが、お前は間に合わないな」




