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裏切りの代価 第四話


「軍のトップは私なんだぞ! いつまでその女の指示に従うつもりだ!」


フラメッシュ大尉はちらりと隊長殿の顔を見ると「改めまして」と一度咳き込み、こちらに身体を向けて姿勢を正し敬礼をした。


「武装した帝政思想(ルアニサム)を持つ一部軍人によりクーデターが起き、西方司令部が墜とされました。ですが、現地に予め潜入し準備をしていた共和国軍北方司令部の特殊部隊によって帝政思想(ルアニサム)は即時かつ完全に鎮圧されました。被害状況は司令室での爆発による火災と銃撃戦での負傷者二十四名。死亡者の報告は受けておりません。実行犯は全員拘束しているようです。

一時、帝政ルーア正規軍を主張し周囲の主要都市部に降伏を求めていましたが、現時点では西方司令部の指揮権は共和国軍最高司令官であるユリナ・ギンスブルグ軍部省長官の下に通常通り戻っております」


「ご苦労、フラメッシュ大尉」と右手を挙げた。フラメッシュ大尉は休めの姿勢になった。


「長い任務だったな。しかし、西部の主要都市といやぁ市長にしろ市議会議員にしろ、帝政思想(ルアニサム)の奴もそこそこいただろうに。あぁ、あれか。共和国での立場惜しさに黙りだったんだなぁ。可哀想に、はっはっは」


報告を聞いている間、隊長殿は棒立ちだった。最初は驚いて両目を見開き、両眉を上げて突っ立っていたが、次第に肩は上がり髪は逆立ち、最後には顔を真っ赤にしていた。


「フラメーッシュ!」


そしてついに、隊長殿は額に青筋を浮かべて怒鳴り声を上げた。


「貴様、我々を裏切ったのか!? 貴様魔法使いが嫌いなのでは無いのか!?」


「フラメッシュ大尉、家に帰って飯の準備をしといてくれ。ジューリアが今マルタンにいるんで今日は飯を作ってくれない。マリークにゃ私から直接ゲンコツくれてやらなきゃいけないし、あと、多分病院の手配も必要になりそうだ」


「かしこまりました。では、グラントルア共和制記念病院を至急手配致します。邸宅の方はおそらく略奪行為に走った市中警備隊にあらされていると思うので、簡単なものしか出来ないかもしれません」


「美味しくて食えりゃなんでもいい。サンドウィッチくらいでいいぞ。でも、ジューリアみたいに具は惜しむなよ。冷蔵庫にでっかいサラミがあったハズ。あと、期限が近いチーズもあったな。盗まれてなければの話だが」


背もたれに寄りかかり、椅子を回した。机から足を出して投げ出すように組んだ。


パンパンに腫れ上がった顔で拳を握りしめている隊長殿を挑発するように無視して話を続けたあと、「しかしなぁ、市中警備隊が窃盗とは、笑えねぇなぁ」と笑いながら隊長殿の方を見た。


「ふざけているのか!」と隊長殿は身振り手振りを大きくし「これはクーデターだぞ! フラメッシュ、貴様いつ寝返った!?」と大尉に詰め寄った。


だが、大尉は隊長殿を冷たく見上げ「私はギンスブルグ家のメイドでして。奥方様には逆らえません」とだけ答えた。


「そうだな。クーデターだ。だった、だな。たった今終わったから」



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