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ダムを巡る攻防戦 第七話

イズミのその言葉が戦場で如何に矛盾を孕んでいるのか、尋ねるのが怖かったのだ。不殺を貫くイズミは優しい善のようでいて、その内面には戦うことを絶対的に許さない考えも持っている。本人もそこまではわかっているが、そのさらに奥に横たわる残酷な答えに気づいていない。私が尋ねることで「敵が心の剣を自らの手で折るまで、殺すことはせず治癒と破壊を繰り返す」という、頑なな者には死よりも強烈な苦痛を与えるような答えを導きかねないからだ。

そして、イズミはそれが可能なほどの力を持っている。

今この場にこの二人が現れただけで、私は孤軍ではなくなり大軍にも勝る力と共にあるような気がしたからだ。

首を左右に小さく振り、余計なことを考えるのは止めた。


アニエスさんが周囲を警戒し始めたので私はポルッカを地面にそっと横たえた。するとイズミはポルッカを診た。

改めて彼女の姿を見ると、全体的にかすり傷が多い。木から落ちたと言ったので、そのときに出来たのだろう。


「意識はあったか? 頭を打ってないか気になる」


「落下直後にキューディラで会話は出来ました」


「クソ、それだけじゃ判断しかねるな」


脚はどれほど銃弾を撃ち込まれたのだろうか。肉が抉れて動かせば骨まで見えてしまいそうだ。右腕も血だらけで酷い有様だ。

しかし、左腕は無事なようだ。異様な機械が付いているが出血はどこもしていない。まるで本人が機械を庇っていたかのようだ。


「やはり、まずはダムの指揮所に運びましょう。そこに治癒魔法の魔石も設備もあります」


「ダメだ。この傷に魔石の治癒魔法如きじゃ付け焼き刃だ」


「ということは……」


私の絶望したような顔を見てイズミは驚いたようになり笑った。


「え? ああ、違う、違う。大丈夫だよ。大丈夫なんだけど、戻っていたら間に合わないってだけだ。出血は致命的に多いが、致命傷ではない。とにかくまずは止血する! ここいらは汚いな。アニエス、簡単に観血処置の防護壁を!」


アニエスさんが物理防御魔法を三人を取り囲む様に張り、内側を陽圧にしたのか鼓膜が押されるような気がした。そこへさらに氷雪系の魔法を唱えた。するとバリアの内側の温度が下がり、乾燥し始めた。

気圧を下げつつ温度も下げるとはかなり高度なことをしている。


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