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ダムを巡る攻防戦 第六話

「あれ、カミュ? 何してんだ、こんなとこで」


「それはこちらの台詞です。ですが、とにかく今は一刻を争います。お二人が来て丁度よかった。ついてきてください!」


走り出そうと二人に背中を向けると、アニエスさんが「待って!」と呼び止めた。

私が振り向くと、私の背中でぐったりとしているポルッカを見た。


「カミーユさん、あなた、背中の女の子大怪我してるではないですか! そんな状態で走っては負担がかかります!」


心配するように声を上げたが、様子を見ると怪訝に首をかしげた。


「その子……。どこかで」


泥と煤だらけで髪も乱れているが、前髪の一部が白くなっていることに気がついたようだ。既視感に目を丸くして、イズミの方へ振り向いた。


「ポルッカ!? なんでここにいるんだ!?」


イズミも同時にポルッカであることに気がついた様だ。

ポルッカは黄金捜索のとき、第二スヴェリア公民連邦国の捜索隊として派遣されていたが、その実は商会の内通者だった。

私は協会本部で無いと判断されて戻り現場に居合わせなかったが、セシリアを狙ったり、ビラ・ホラへの妨害をしたり、イズミたちの行く手を幾度となく阻んだらしい。

この二人にとっては許しがたい存在のはずだ。出来れば気がつかずにダムまで行き着いて欲しかった。それがずるいと分かっていても、緊急事態であり、ポルッカは重傷なのだ。

黄金捜索以降、イズミたちと同じように、私にもポルッカにも様々なことがあった。

だが、それを説明している暇はない。


「事情を話している暇はありません。今はこの子が必要なのです」


少し誤魔化すように言って、再び背中を向けて走り出そうとした。

やはり、イズミは「待て」と私を呼び止めた。


許すことは出来ないのだろうか。どうすれば最適なのか。


しかし、思ってもいないような、いや、どこかでそう言ってくれるのではないか期待していた言葉を私にかけてくれたのだ。


「まだ生きてるんだろうな?」


私は嬉しさ暖かさを覚えて、背中を向けたまま下を向き口を緩めてしまった。それを堪えて何もないフリをして振り返り、「虫の息です。被弾して木から落ちて、連盟政府・商会の連合軍に攻撃されていました。戻って治癒魔法を使います」と冷静を装った。


イズミは「一旦、様子を見せろ。ここで出来ることをする。治療は応急でも何でも早い方がいい」と言うとポルッカを見た。


多少の罪悪感もあり「色々あったようですが」とぽつりと言ってしまった。


「確かに、こいつは黄金捜索で裏切ったしやらかしてくれたな。でも、それはそれ、これはこれだ。目の前で死にかけてるのに放っておくワケにはいかない。コイツが自分から反省するまで生きてもらわなきゃな」


私は「そうですか」としか言えなかった。しかし、期待通りの返答に喜びを感じて言葉を少なくしただけではない。


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