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ダムを巡る攻防戦 第四話

山を下りて戦場が近くなると硝煙の匂いと爆発音が大きくなってきた。

木々の合間から見えた広場は混戦状態になっていた。そして、連盟政府・商会の連合軍が押し返し始めており、最悪なことにここは完全に敵の後方だ。

後方であるなら挟み撃ちにすればいい、というのは安直である。今私は一人なのだ。戦う意思を持っているので無抵抗というわけでは無い。つまり私は今たった一人の軍隊なのだ。

後方から奇襲を掛ければ混乱を起こせるかもしれない。だが、それは一時的なものであり、ダムが壊れた今、敵兵の増減よりもダムの決壊するか否かが戦争の勝敗を左右するのだ。今連盟政府は時間稼ぎの戦いをしているのだ。対するこちらはとにかく襲い来る敵たちに撃ち返しているだけ。軍を兵士単位ではなく集団としてみれば、どれほどこちらが敵兵を減らそうともダムが決壊してしまえば敗北は確実なのだ。


孤軍奮闘はおおよそ最後には死ぬ。どちらにおいても意味が無い。

そして、今まさにしているのは戦闘ではなく、ポルッカの、ダムを直せる存在の救出任務だ。前向きに捕らえれば、ダムを直せばこちらの勝利でもある。だが、押されたこの状況、ポルッカの容体、様々なことにおいて不利である。


そして極めつけは目の前に並ぶ連盟政府・商会の連合軍の兵士たちの背中だ。

小隊、いや中隊規模の兵士がいるのだ。幸い私にはまだ気がついていない様子だった。

どうやって切り抜ければいいのだ。ポルッカの容体は良くない。早く辿り着かなければ、ダムはおろか彼女の命すら怪しい。

遠回りをしようとしたとき、不覚にも枝を踏んでしまった。細い枝なら様々な音にかき消されていただろう。だが、やや太い枝だったのだ。

弾くような軽い音が響くと、兵士の何人かはこちらを振り返った。茂み隠れたが、何人か様子を見に来るようだ。三人、いや五人ほどこちらに来ている。

戦うしかないのか。茂みに垂れ下がった枝を持ち上げられたら見つかってしまう。戦闘を歩く兵士が枝に手をかけた。私も構えるようにナイフに手をかけた。


「おい! 何だあれは!?」


後ろにいた男が声を上げた。いよいよ見つかったか、さあ来い。ナイフを強く握った。


しかし、茂みは一向に持ち上げられることはない。葉の合間から様子を覗うと三人は額に手を当てて遙か上空を見ていたのだ。

一体何を見ているのだと私も視線を上に逸らすと、何かが落ちてきていた。

黒い点はすぐに手足が分かるようになった。そして、さらに近づいてきたので目を凝らした。


何が落ちてきているのか分かったその瞬間、驚きと期待ばかりの歓喜に胸が躍ってしまった。



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