ダムを巡る攻防戦 第一話
ポルッカは虫の息だ。このままではダムを直すどころか死んでしまう。
山を登りポルッカのところへはすぐに着くことが出来た。
襲い来る連盟政府・商会の連合軍の兵士たちは銃を持っているものの、全体的に動きに無駄が多い。どこで作られたのか、見たことも無いその銃は狙いが悪く、単発式だ。彼らはどうやら銃は一撃必中必殺の最高の武器だと勘違いしているようだ。その一発が外れてしまったときのことを皆考えていない。
一発を避けてしまえば、わちゃわちゃした手つきで弾込めをするのでこちらが仕掛けるには充分な時間になる。
そして、連携がとれていない。一発撃てばこちらが回避行動に出て隙が出来ると言うことを理解していない。
だが、やはり強い武器であることには変わりなかった。一人一人と敵兵の狙いの悪い一撃に運悪く当たり、ポルッカの所へ着いたときには私の後ろに着いてこられたのは銃声だけだった。
ポルッカは囲まれて甚振るように銃で足や手を撃たれていた。取り囲む兵士は五人だった。
こいつらに誇りはない。戦場に行かず、後方で敵、敵ですらない者を甚振るようなクズだ。
前線にいて握られる引き金には、成すべき事は殺しではあるが大義あるだろう。だが、もはや敵もいなくなった森の中で無抵抗な者への残虐行為を楽しむのは兵士のすることでは無い。
この中の何人がこの行為に嫌悪を抱いていただろうか。戦争の狂気に同調しなければ味方に殺されるかもしれない。それ故に引き金を握る者もいただろう。
協会の執行猶予である『無垢の誓い』は改善が見込める者にのみ試す誓い。今、この場ですれば誓いそのものを汚すことになる。不必要だ。
私はとりあえず階級章に星が多く付いている者に背後から近づき、ナイフを横にして後頭部の下辺りを刺し、倒れてきた身体の前にナイフを回して刃を立て、心臓を狙い鳩尾から抉るように刺し上げた。
改めて近くで見ると若くはなく、どうやら指揮官クラスのようだ。連盟政府はまだ貴族社会であり、この階級まで上り詰めるには貴族の出でなければいけない。
誇りはどこへやら。貴族も墜ちたものです。カルル・ベスパロワの行動の意味が理解出来てしまいそうです。




