マルタン芸術広場事件 第五十九話
「ティルナ、アニバルたちがタイミングをくれた! 急げ!」
「ダメ! エンジンがかからない! どこかに被弾して系統が壊れたみたい!」
コックピットの天井に埋め込まれているボタンのような魔石が一部光っていない。
「こいつら起動できるのか!?」
「多分そう!」と言いながらティルナはそこの蓋を開けた。中から複雑な魔力伝線があふれ出すように出てきた。落ち着かない手つきでそれを一つ一つ確かめた後、操縦席を離れるとシート横を開けた。
「これが焦げてる! さっきの魔法が被弾したからね! 何か繋げられるものない!? 雷鳴系の、何か、二インチくらいの大きさの魔石とか!」
「何か、何か無いのか!?」
そう言うとウリヤが立ち上がり、突然リボンに付いていた石をもぎ取った。そして、俺に握り渡してきたのだ。ウリヤの手が触れると、俺の手はピリピリと痺れた。
掌を見ると、そこには黄色い石があった。これは、魔石!?
だが、ウリヤの手が離れるとそれは収まったのだ。ピリピリとしたのは魔石のせいではない。まさかウリヤは。
しかし、のんびりしている暇は無い。
「これは君の形見じゃないのか?」
「イズミ、早くそれ使って! それで回路を繋げて!」
「でも」「早く!」とウリヤは急かしてきた。まだ迷っている俺に
「形見でも何でも、私が生き残らなかったら、そんなもの意味が無いの! 私が、私自身がお爺ちゃんの形見みたいな者だから! たった一つの私が残らなければ、お爺ちゃんが浮かばれない! だから!」
と力強く俺を見つめてきたのだ。
俺は確かにその意思を強く感じた。掌の魔石を握りしめ「ありがとう」と言うと基盤の方へと持っていき「君とっちゃ、俺はおじさんかもな!」と回路に魔石をはめ込んだ。
すると、消えていた一部のスイッチが全て点灯し完全に起動状態になった。
「点いたわ! 動かすから掴まって!」と言いきる前にティルナは機体を回頭し始め出入り口の方へ向けた。
しかし、亡命政府軍は飛行機を出すまいと格納庫のドアを閉め始めたのだ。




