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マルタン芸術広場事件 第五十二話

炎と風に乗りだいぶ足を進めることが出来た。しかし、その勢いも収まりつつあった。


勢いが衰え始めても尚、アニエスと俺は杖を前に掲げ、小さな雷鳴系の魔法を撃ちだし続けるように唱え続けた。

だが、魔法であることに気がつかれ魔法防御を展開された。

しかし、それを唱えた者は誰であるかすぐに分かった。以前砂漠でこいつらの手を凍らせたあの魔法に対応する為に魔法を使う者は最前列の者だけにしているようなのだ。


「ティルナ、右端のヤツを失神させてくれ! 掩護する!」


俺は雷鳴系を一度中断し、炎熱系の魔法を唱えた。杖先から炎を火炎放射器のように横に広がるように放ち、炎で一度視界を遮った。


僅かな一瞬だけ解除し、その隙に「今だ!」と言うと、ティルナは途切れた炎の合間を縫って右端にいた防御魔法を唱えた者の首筋を剣のフラーで叩き失神させた。

アニエスに指示を出して雷鳴系の魔法を再び唱えさせた。


思った通り、防御魔法を唱えたのはその者だったようだ。再び雷鳴系の魔法が通じるようになった。

防御がかわされたことで隊列に動揺が走ったのか、雷鳴系の魔法はそれから僅かばかり効果的に敵たちを失神させられ、俺たちは再び大きく前進した。


「このまま押し切るぞ!」とさらに攻勢を強めて俺たちは地下廊下をひた走った。


しかし、何度も同じ手は通用するはずも無かった。

防御魔法を唱える役割を次第に後方に下げていったので、ティルナの負担が大きくなってしまった。

詠唱者が五列も後方にいる者となると、失神させなければいけないという手加減も厳しくなってきてしまったのだ。


そして、さらに後方からヴァンダーフェルケ・オーデンの別部隊かそれとも亡命政府軍第一航空連隊が迫ってきているのか、足音が聞こえてくるのだ。足音は一つ一つは重く、まばらに聞こえて規則的ではないので数も非常に多いようだ。


前方は時間はかかるがあと少しだというのに、それほどにここで時間を食ってしまうと後方からやって来る別部隊に追いつかれる方が先になってしまう。挟み撃ちにされてしまってはどうしようもない。移動魔法を使えればいいが、共和国の演出しようとしている帝政の終わりの演出を完全にする為にはそれは絶対に避けなければいけない。

死ぬよりマシだ。最悪の場合は、と覚悟を決めた。


だがそのとき、「あそこだ! あのドアだ!」とヴァジスラフが突然声を上げた。


彼の指さす先に鉄製の錆びたドアが見えた。


「あのドアを開ければ格納庫に出られる!」


彼の声に僅かにだが士気が上がり、皆一直線にそのドアを目指した。



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