マルタン芸術広場事件 第五十一話
「こっちから攻勢には出ない! まずアイツらに撃たせろ!」
「なぜ!?」
「ここは空気が悪い!」
そして、俺は自分を中心に円形に物理防御魔法を張った。
「こちらからは攻撃できないではないか!」とヴァジスラフは突然張られた物理防御に声を荒げた。
「考えがある!」
前方からいよいよヴァンダーフェルケ・オーデンが迫ってきた。そして、ついに彼らの魔法の射程圏に入った。
すると一斉に魔法を唱え始めた。色とりどりの魔方陣がくみ上げられて、そのうちの一つがついに放たれた。だが、まだ距離が足りなかったのか手前に落ちて炎を上げた。
その瞬間、炎は白く大きく広がり大爆発を起こしたのだ。
ここは地下道だが、ほとんど下水のような状態だ。おそらくナイアモモナの時代からあるものだろう。おまけに人が入ることなどほとんど無かったのだ。メタンか何かの可燃性のガスが山ほど溜まっているはずだ。
爆発の熱と熱風が物理防御の周りを避けて通り過ぎていった。炎が晴れて前方が再び見えるようになると、ヴァンダーフェルケの連中も何列かまで弾き飛ばせた。
「全員構えろ! 杖持ちは炎熱系の魔法を最大限で唱えろ! それ以外は銃を構えろ!」
と言うと全員が武器を構えた。爆発も収まり始め、驚いたネズミが先ほどと同じように足元を駆け抜けて通り過ぎたそのとき「魔法、放て!」と指示を出した。
俺は誰よりも先に炎熱系の魔法を放った。魔法が物理防御魔法の壁を通り抜けると、タイミングよく吹き戻しが起こった。魔法が壁に当たり炎になると、連鎖的に炎が発生した。そしてそれらは吹き戻しの風に乗り、ヴァンダーフェルケの方へと襲いかかったのだ。
吹き戻しが収まる直前に物理防御を解除すると同時に「突撃! 吹き戻しの追い風に乗れ!」と指示を出して、俺たちは走り出し赤い炎の壁と共に前進を始めた。




