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マルタン芸術広場事件 第四十六話

アニバルとヘマを連れ出し、階段を下りると前方から兵士が何十人かやってきた。ヴァンダーフェルケの連中かと思ったが、黒い服で統一はされていなかった。そしてよく見ると、先頭にいるのは先ほどサボり魔の中にいた真面目ぶり君だった。どうやら全員亡命政府軍の兵士のようだ。

これでこの先は多少安心だろう。

しかし、安堵に肩が降りたと思ったそのとき、「止まれ! お前たち、皇帝を開放しろ!」と銃を向けてきたのだ。


「何言ってるんだ? 通してくれ。皇帝を逃がさなければいけないんだ」


「先ほど、バルコニーに向かったらギヴァルシュ政治顧問殿とルクヴルール軍事顧問が怪我をされていた。そこで『皇帝が誘拐された』と報告を受けて僕はここへと向かったんだ! 軍事顧問官殿から、皇帝が無事保護されたという一方は受けていない。つまり誘拐犯はお前たちだ! 通すわけにはいかない!」


「お前、スピーチ聞いてなかったのか?」


「そんなものは知らない! とにかく皇帝を開放しろ! そうすれば処分を甘くしてやる!」


集団の先頭にいた真面目ぶり君は後ろに部隊を並べて自信たっぷりになっている。

ああ、もう、ホントにバカ。バカバカ、バカ。まんま日本にいた頃の俺みたいじゃないか。

何がムカつくって、サボり魔くんだけじゃなくて、唯一流れたスピーチの最後の方すら聞いていない奴が何十人がいるということだ。


「連中は第一航空連隊だな。厄介だ」


ヴァジスラフが気まずそうにこそりと囁いた。


「ちょっと待て、航空連隊だと? マルタンには高性能の飛行機が一機しか無いってハズだが?」


尋ね返すとヴァジスラフは気まずそうに視線をぐるぐる回した。この男、何かと高慢ちきな態度のくせにこの期に及んで何故そのような顔をするのだ。嫌な予感しかしない。


「あぁ、すまない……。私の指示で軽飛行機を何十機か作らせていた。それに、飛行機が何機か出来たあとにルクヴルール軍事顧問が第一航空連隊の指揮権を無理矢理奪ったことでヤツの直属になってしまった。当初はエルフと人間の混成だったが、ルクヴルールがエルフの隊員を全員追い出した。おまけに自分だけの指示に絶対服従させる代わりに好待遇を与えることで従わせていた。だから、皇帝の話も聞かない。スピーチも聞くなと命令を出されていた。おまけに待遇差で一般兵から嫌われているし、見下している」


航空機を増やすのは分からないでもない。だが、それよりも真面目ぶり君だ。

さっきからホントに何なんだ。邪魔ばっかり。俺はため息が止まらず、額を擦ってしまった。

ため息が止まらなかったのはアニエスも同じようだ。彼女もため息を溢すと、


「ヴァジスラフさん、あなたねぇ、もう。だからお金が、はぁ……。ガバガバの国家運営に君主である私の話も聞かない。せめて軍人たちの名誉と生命を補償する為に皇帝たろうと宣言をしたのが馬鹿馬鹿しくなってきたわ……」


と情けなくぼやいた。ヴァジスラフ氏はアニエスの言葉にこれまでに無いほどに動揺を見せた。


「へ、陛下、申し訳ございません! で、ですが、国防の為にも航空戦力は必要だと思いまして」


「最悪ね。もうその国もガタガタじゃないの。バスコおじさまになんて言えばいいのかしら」


「とにかく、こいつらぶっ飛ばして格納庫に行くぞ!」


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