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マルタン芸術広場事件 第四十二話

褐色の肌に白髪とはまた違う輝きと艶のあるシルバーの髪。青に近い紫色をした大きな瞳。

見覚えのある姿はなんとティルナ・カルデロンだったのだ。


二人を止めなければいけないと俺はウリヤに支えて貰い、部屋の奥へと進んだ。


「ティルナ、待て。事情が」


そう呼びかけると、紫の視線だけがこちらに動いた。そして、俺の姿を見ると大きな瞳がひときわ大きくなり輝いた。


「イズミさん!? 何故ここにあなたが?」


ティルナは驚いて力が抜けた。その隙にアニエスが押し切り、杖で剣を弾いた。


「ルカス大統領から何も聞いていないのか?」


「私は今回、金融協会の関係でここにいます。先ほどまでカミュと山岳地帯にいました。別命でヘマ・シルベストレとアニバル、ウリヤ・メレデントの救出が指示されていました」


ティルナは肩を上下させながら剣を構えたまま下ろす気配は無い。それどころか次第に視線を強くした。


「イズミさん、なぜあなたがこの男と行動を共にしているのですか? この男は独立式典襲撃事件の主犯格の一人ですよ? 許してはおけません」


「待ちなさい」とアニエスが杖をしまい、ティルナの前に仁王立ちになった。


「確かに襲撃事件を起こしたのは帝政思想(ルアニサム)です。彼も帝政思想(ルアニサム)です」


「ならば私にはソイツをここで始末する権利があるわ」


ティルナは大剣を構えて矛先をヴァジスラフの顔に向けた。今にも斬りかかりそうな殺気を放っている。


「この人には多くの責任があるのは確かです。ですが、帝政思想(ルアニサム)を歪めること無く、主張してくれたおかげで私はここまで来られました。亡命政府軍の兵士たちの多くも、私を信じてくれています。今後、ユニオンとの友好を考慮して殺さずにおけないでしょうか」


アニエスは落ち着いた声で呼びかけたが、「許せるわけがないでしょう!」とティルナはヒートアップしていった。


「家族を殺した人間を許せるわけがない! ならあなた、私がイズミさんを殺したらどう思うの!?」


アニエスはティルナの言葉を聞くと間を開けた。そして一言、「子どもなのね」と言ったのだ。


「私もブルンベイクを焼かれたとき、連盟政府のスパイを殺しても良いと思ったわ。でも、感情的に鳴って視界に入った瞬間に殺さなくてよかった。燃やしたのは、そのスパイではなくて、他の連盟政府の軍だった。人殺しになんかならなくてすんだ。それも人違いだったなんて、自分にも相手にも永久に取り返しの付かない後悔をするところだったわ。そのときは、イズミさんが止めてくれたの。イズミさんが殺されてしまったらどう思うかですって? 私もきっと相手を恨むでしょうね。でも、私にはあなたの気持ちが分からない。イズミさんは何度も危険な目に遭っている。死なずに必ず私の所に来てくれる」


「誰も死んでないくせに、分かった風な口を利かないで!」


「そんなことないわ。実は私とイズミさんには子どもがいたの。でも、もう、ね」


ティルナは動揺を見せた。アニエスはそれを押すようにさらに語りかけた。


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