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マルタン芸術広場事件 第四十一話

「メレデントの家系の私を助けたことを悪く言うユニオンの人もいるかもしれないけれど、私は絶対にあなたの味方よ、って言ってくれた。心配みたいでアニバルをいつも私に付けさせてたわ。過保護よね」


やはり、ヘマ・シルベストレは美魔女を自称するただの若作りおばさんではないのだ。孤児の支援にも資金を出していた。

アニバルもウリヤ同様に家族を失っているので、何かと気が合うのだろう。


予想外の会敵も無く、アニバルとヘマの部屋の前に着くことが出来た。

しかし、ドアは既に開けられていた。観音開きのドアの右側だけが数センチ不自然に開き、風が吹いているのか僅かに動いている。

同行していた兵士がそれに気がつき、行く手に右手を差し出して俺たちを止めた。そして、銃を構えてドアに背を付けて中を窺った。

その場にいた全員に緊張が走り静まりかえると、話し声が聞こえてきたのだ。一つは男の声、もう一つは女性の声、そしてもう一つ高い女性の声が聞こえる。

男の声はアニバルのもので、女の声はヘマだ。もう一つの声は誰のものか分からない。だが、どこかで聞いたことがあるものだった。


ヴァジスラフは俺を一度肩から下ろすと、拳銃を取り出し銃口を上に向けた。

アニエスは俺とウリヤを背後に隠すようにして杖を持ち上げた。


兵士が突入するつもりのようで、後ろを振り返り二、三度頷いて合図を出してきた。そして、指を三つに立て、ゆっくりと一つずつ下ろしていった。


指が一つずつ下ろされると緊張感はさらに高まり、唾を飲み込む音さえも聞こえてしまいそうなほどになった。


そして最後の一つが折られると同時に、兵士とヴァジスラフ、それからアニエスが突入した。


「誰だ! 包囲されているぞ!」と兵士が言い終わるよりも速く、中にいた何者かがその兵士を弾いた。兵士はドアにつぶかり、ドアごと廊下に押し戻された。

もう一人の兵士が突入すると、小銃で持っている武器を受けたのか、高い音が響いた。

アニエスとヴァジスラフが入り、遅れて俺も内部の様子を覗き込んだ。


そこではヴァジスラフが銃を構え、アニエスが杖で剣を押し戻していた。

剣と杖は込められた力が強いのか、火花を散らし、カチカチキリキリと火打ち石をぶつけるような音を立てている。


「あなた、皇帝ですね?」と侵入者は力み震える声でそう言った。



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