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マルタン芸術広場事件 第三十八話

いんいんと響き鼓膜を張り詰めさせた銃声が次第に収まるよりも早く、女性の悲鳴が聞こえた。

悲鳴を上げたのはバルコニーの影にいた杖を掲げていた女性だった。手に持っていた杖が粉々になり煙を上げながら宙を舞っている。


ウリヤが撃たれてしまったのかと思ったが、撃たれたのは女性幹部のほうだ。

手の甲を撃ち抜かれているようだ。しゃがみ込み、出血している掌を震えながら押さえ付けている。


そして、銃を撃った男が俺に近づいてくると肩を抱き上げ、「こっちだ!」と有無を言わさずに移動を始めた。


狙撃を回避するために見通しの悪い廊下に戻り、どこかへ向かって移動していた。

亡命政府軍の兵士がこちらを気遣うように見ている。アニエスに気がつくと、皆一様に跪くか敬礼をした。

何とも異様な光景だ。先ほどまで対峙していたというのに。

アニエスの亡命宣言にいきり立つ者は誰一人おらず、そして、兵士の誰もがアニエスを皇帝として認めているようだった。

亡命政府軍は上に行くほど人間の割合が高くなり、皇帝の下にあった顧問官では半分が人間を占めていた。ここにいる末端兵士たちは完全に難民エルフのみによって構成されているのだ。

エルフたちにとってルーア皇帝とは共和制に移行しても畏怖の対象である。傀儡まっしぐらであり支配階級の人間たちも横暴だったためか、それがかえって今の状況をよくしてくれているのだ。


「おい、兵士たち! 皇帝陛下をここから離脱させる! 現状の報告と、誰か格納庫への近道を教えろ!」


俺を支えていた男がそう怒鳴ると、兵士が数人ほど集まってきた。


「市庁舎内部に謎の集団が入り込んでいます。我々で対処しています。数も多く連携がとれている敵なので少々手こずっていて一進一退の状態です」


「格納庫へは今敵が封鎖しているところを通るしかありません」


兵士たちが次々代わる代わる報告をしてきた。アニエスは「待ってください! アニバルとヘマさんも助けなければいけません」と話をしている男と兵士たちに割り込んだのだ。



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