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マルタン芸術広場事件 第三十五話

 起動まではどれくらいだろうかとサーバーの方へ視線をやると、七十八パーセントと表示されていた。


 クソ、遅い!


「戦いの最中によそ見をするとは、貴様何から何まで素人だな」と男が言うと同時に、右上腕から足を離すと頬を蹴り飛ばしてきた。口の中に血の味が広がった。


 そして、今度は顔を踏みつけてきたのだ。


「非力な魔法使いが私にかなうものか。私は連盟政府では軍にいたのだ。魔法が使えないことで蔑まれもした」


 一度顔から足を離すと、再び足を落とし躙るように足首を動かしてきた。

 口の中に血の味だけではなく、苦く硬い粒が入ってきた。


「だから私は魔法を使えるヤツが大嫌いなんだ!」


 知るか。黙れ。俺には魔法が使えない友達がたくさんいる。そいつらが卑屈になったところは見たことが無い。

 こんなところで権力をぶんどってでしか得られない木っ端役人風情にそんなことを言う権利なんか無い。


 あと、九十パーセント。あと少し、もう少し。


 今度は喉仏を踏みつけてきた。息が出来ない。俺は両腕で足を退けようと掴んだ。

 しかし、凄まじい力で押さえ付けられている。


「苦しいか。そうだろうな。私が味わってきた苦しみだ! それを乗り越えてたたき上げの私の邪魔はさせないぞ。わははは!」


 出世できない無能チンカスがイキッてんじゃねぇ! テメェは魔法が使えても出世なんざできやしねぇよ! 汚ぇ綿の飛び出た窓際の椅子に座って死ぬまで判子押してろ!

 俺は叫びたかったが不可能だった。

 九十九パーセント! あと少し!


「ほれほれ、死んでしまうぞ。何かしろ。面白くないぞ。それなら私が息の根を止めてやろう!」


 と言って足をさらに喉に押さえ付けてきた。

 クソ、息が出来ない。意識が遠のきそうだ。マズい。このままでは――



「「「 キィィーーーーン! 以 上 を 私 か ら 我 が 親 愛 な る 臣 民 へ と !!! 」」」



 部屋の四隅のスピーカーから鼓膜を引き裂かれるような爆音のハウリングの後に、大きすぎて割れた音でアニエスの声が響き渡ったのだ。

 サーバーが完全に起動してついにオンライン状態になったのだ。

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