マルタン芸術広場事件 第二十八話
廊下の角にさしかかると、サモセクが杖先でゆんゆんと震えだし緑色の光りを照り返し始めた。そして、角の先の方を示すように曲がり始めたのだ。
勢いよく角に立つと、視線の先にはヴァンダーフェルケ・オーデンの連中がいたのだ。
突然現れた俺たちに驚き、杖を一斉に抜くと「我々は……」と毎度の名乗り口上を上げ始めた。
俺は一度サモセクを鞘に収めた。「構うな! 撃っちまえ! でも、殺すな!」と言い終わる前にレヴィアタンの連中はパンパンと撃ち始めていた。
誰か死人が出るとまたしてもヒヤリとしたが、俺が不殺を貫いているのを知っているようで、腕や足を正確に撃ち抜いている。何処で知ったというのか。
しかし、対峙するヴァンダーフェルケ・オーデンの連中は残酷にも負傷した者を誰一人助けようともしない。
それどころか、負傷した隊員を見下し、まるで邪魔な物を退けるように足蹴にしているのだ。
それを見ていられず、足蹴にした者の足元に向けて冷気を放ち両足を完全に凍り付かせた。
「いいのですか? 凍傷になりますよ?」
「足は人を蹴る為にあるんじゃない! 前に向かって歩く為にあるんだよ! そうでないなら切っちまえ!」
足が凍り付き動けなくなった隊員の利き手首にレヴィアタンの誰かが放った銃弾が当たり、杖を握ったままの掌が宙を舞い、回転しながら真っ赤なものをまき散らしながら飛んでいった。
今度はそこで動けなくなった隊員を盾にするように他の隊員たちが背後に回り込みだり持ち上げたりしながら、魔法を撃ち込んできたのだ。
「アイツらなんだ!? なんかおかしいぞ!?」
しかし、こちらのレヴィアタンも器用なもので、放つ際に僅かに出る杖先や手を的確に撃ち抜いている。
「我々に聞かれても困ります! とにかくここを離脱しましょう! どちらを指していましたか?」
「ここを真っ直ぐだ! 今魔法をバカスカ撃ってきてるヤツらを越えなきゃいけない!」
「容赦なければいけますが、ここは引きましょう!」
「どっちに逃げる!?」
「来た道を戻るしかありません!」
しかし、目を離したそのときだ。
後方から爆風を受けた。強烈な炎熱系の魔法を受けてしまったのだ。




