表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

1567/1860

マルタン芸術広場事件 第二十六話

「おい、テロリストども」


 そう呼びかけると、一人がムッとしたように振り向いた。

 その呼び方が気に入らないのは分かってる。自分たちは志があって動いているのだ。テロリストと呼ぶのは、その志が気に入らない者たちだ。

 だからあえてそう投げつけるように言った。


「どこへ向かってんだよ? アニエス助けるんだろ?」


「仲間が情報収集中です。この建物内にいるのは分かっています。大人しくついてきて貰いたいです」


「言い方がテロリストのそれだな」


 強く言い返すと一人が「イズミさん、協力してください」とやや脅すように低い声になった。


「してやるよ。仲間だとは思ってないけどな。で、アニエスはどこにいるんだよ?」


「それは今仲間が」


 俺も苛ついていた。「遅い!」と怒鳴り遮ってしまった。


「お前らずっとマルタンに何ヶ月もいたんだろ? なんでそんなのもわかんねーんだよ!」


 腰に収めていたサモセクの柄に左手をかけた。するとレヴィアタンの者たちは一斉に銃口を向けてきた。


「何だよ。撃ってみせろよ。お前らじゃ何もかも手に負えなくなるぞ」


「我々もあなたに乱暴なことはしたくないのです。お願いですから、その武器から手を離していただけますか?」と視線だけをサモセクの方へと向け、銃口を僅かに動かして手を離すように促した。


「これは武器じゃない。これがアニエスまで導いてくれるんだよ。お前らボンクラの捜査能力程度じゃ、見つけるまでにスピーチが終わってアニエスが狙撃される」


「信じられると思いますか?」


「じゃあ信じなくていい。お前ら全員ここで戦闘不能にして、俺一人で助けに行くだけだ。これを使ってな」と言って視線を動かして杖を指した。


「俺は人を殺せないタチだ。よかったな。魔法で気絶するだけで済むんだからな。ここでねんねしてろ。終わったら起こしに来てやるよ」


「それが武器ではないという証明は出来ますか?」


「お前ら、警戒すべきものを間違ってるぞ。俺は魔法が使えるが、刃物なんか包丁しか持ったことがないし料理も下手くそだ。杖のほうに警戒した方が良いぞ」


 俺は先ほどから杖を手放していない。右手には常に握られている。


「そういえばお前らは見たとこ戦いのプロだろ。さっき見てたけど、射撃の精度が良すぎる。そんな戦いのプロに聞くけど、万年筆で人を殺せないという証明をしてみせろよ」


 しばらくにらみ合いが続いた。話をしていた者が銃を下ろした。


「わかりました。嘘ではないようですね。ですが、怪しい動きを見せたら拘束させていただきます」


「縛り付けるだけで済むのね。とりあえず見てろ」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ