マルタン芸術広場事件 第二十五話
ムーバリからこいつらはアニエスを救出する為にいると聞いていた。しかし、なぜ俺の名前まで知っているのだ。俺が同じ目的で動いていることを聞きつけたのだろうか。
だが、レヴィアタンはマルタンの市街地のみで活動しているので情報が入ってくるとは思えない。
俺自身色々やらかしては来たが、自分の名前がそこまで知れ渡っているとは思っていない。
銃を持っているので身の危険もあるが、今はヴァンダーフェルケの連中を片付けてくれる様子なので、とにかく姿勢を落として任せることにした。
それにしてもレヴィアタンとは何者だ。難民エルフの寄せ集めテロリストとは思えないほどに銃の狙いは正確で、そして引き金に戸惑いが無い。
十人足らずの小集団からいくつも放たれた弾丸は、その全てが魔法使いたちの腕や足に命中し、あっという間にその場にいた者たちを行動不能にしていった。
レヴィアタンの最後方にいた者が背後を振り返り、やってきた方向の安全を確認したようで、右手を挙げて小さく手招きをすると「こちらへ」とすぐ近くにいた者が俺を引っ張り上げた。
こいつらの目的はアニエスの救出であることは分かった。だが、信用したわけではない。立ち上がると同時に引っ張り上げた手を振り払った。
ヴァンダーフェルケの連中は戦闘不能だが、これから増援が来るのは間違いない。
あいつら、クロエとムーバリは無事なのだろうか。しかし、あまり考えている暇も確かめている暇も無い。
あいつらは大丈夫だろう。にわかにそう言う自信もあった。
俺はレヴィアタンと共に廊下の奥へと足早に進んだ。




