表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

1554/1860

マルタンの一番長い日 第三話

「スピーチまではあと何時間ですか?」とマフレナに尋ねると「式が始まるまでは三時間、アニエス陛下のスピーチまでは四時間となっております」とすぐに返ってきた。


 だいぶ早い。私はここで必ずスピーチをして、そして皇帝として宣言をしなければいけない。


「ここは危ないわ。窓が割れてしまうかもしれない。あなた達三人も私と一緒に待避しましょう」


 待避しようとドアに近づくと、「アニエスー」と呼ぶ声と共にドアがノックもなく思い切り開かれた。この乱暴な開け方はウリヤちゃんだ。


「ウリヤ執政官、いきなり開けないたらダメでしょう」


「私たちの仲じゃない。そんなのどうでもいいでしょ」


 部屋の中にいた三人のメイドさんを見ると「あ、そうね。確かにそうだったかもしれないわ。ごめんなさい」とさらりと言いながら部屋へと入ってきた。


「ヴァジスラフが避難しなさいって言ってたわよ。あの男が直接言いに来ればいいのに。私、執政官よ? 顎で使わないで欲しいわ。でも、街であんなことが起きているから、それはそうよね」


「何が起こっているのですか?」


「私もよく知らないわ。

 その辺でサボってた兵士たちに聞いたけど、緑っぽい服着た男と鳥みたいな仮面を被った者が自走する亀みたいなのに乗って連盟政府側のゲートに突っ込んできたらしいわ。

 一人は魔法で攻撃してきて、もう一人はその亀に付いていた銃でばんばん撃ってきたんだって。

 たぶん亀ってサイドカーのことでしょ。銃も形がちょっと違うみたいだけど、共和国にある機関銃みたいなものでしょ、きっと」


「そうなの。危ないわね。とにかくウリヤちゃんも逃げましょう」


「ちゃんじゃないわ! 執政官よ! しっ・せい・かん!」


 二人でいるときはちゃん付けで呼ぶクセが出てしまった。

 ウリヤちゃんはいつも通りだ。上半身を乗り出して食いしばった歯をむき出しにして顔を赤くしている。

 街で戦闘が起きているけれどこの子は平常心を保っている。それなのにイズミさんが来てくれたからといって私が動揺してはいけない。


 ドアを抜けると外にはヴァジスラフ氏がいた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ