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マルタン丘陵での戦い 第十八話

 木の上で左肩を押さえて身を縮こめたのが見えると、そのままバランスを崩して葉っぱを巻き上げると木の上から姿を消した。

 キューディラ越しに耳障りなまでにガサガサと葉をかき分けるような音が聞こえたあと、鈍い音が三度ほど聞こえた。落ちてしまったのだろう。

 それが収まり静まりかえると周りの雑踏が聞こえた。どうやら落ちた先にいた連盟政府・商会の連合軍兵士に囲まれたようだ。


「ポルッカ、無事ですか!?」


「生きては、いる」


 返事は聞こえたが、すぐに湿っぽく咳き込むような声が聞こえた。かなり負傷しているようだ。


「銃はかすめただけだが、落ちたときにあちこちぶつけた。足が動かない。おまけに、囲まれた」


 ポルッカが黙ると、足音と叫び声だけが聞こえた。口から息を吸い込む音がして「無理だな」と震えるのを堪えるような声でそう言うのが聞こえた。


「私のような遠距離から狙う者は歩兵に捕まれば卑怯者だと罵られて袋叩きだ。死ねれば良いが、死ぬより辛いかもな。ハッ、我が身が女であることを、後悔している」


 囲んでいる兵士たちがわぁわぁと声を上げているのが先ほどよりも大きく聞こえる。それも怒り狂ったような怒鳴り声だ。

 敵側は再び押され、焦りに押しつぶされて感情のコントロールが出来ず、何をし出すか分からない。


「ポルッカ、左腕は使えますか?」


 左腕を確かめているのか、金具の擦れる音が聞こえた。


「辛うじてだ。だが、木の葉に覆われて日光が少ない。出力はほとんど無いようなものだな」


「諦めないで! 急いで彼女の救助を! 近くの偵察兵、彼女を護りなさい!」


「ここは戦場だ。情けは無用。偵察兵には与えられた役目をさせ続けろ。一人の偵察兵のせいで戦場から目を塞ぐな」


 言っていることは正しい。偵察兵は一人ではない。彼女が隊長のような役割を果たしている。それは彼女が広範囲を一人で見渡せるからなのだ。その広範囲は一人ではなければ見通そうと思えば見通せる。

 もし、彼女の救出に偵察兵を動員してしまえば、その分の穴が出来てしまうのだ。

 情報の穴は、いくら有利に戦況を進められたとしても敗北への糸口にならないとは言い切れないのだ。戦争には偶然はないが絶対もないのだ。

 だが、それでもだ。ここで易々と諦めるわけにはいかない。何か手はあるはずだ。感がるまで、待て、と諦めないように声をかけ続けようと思った矢先、


「カミュ、緊急事態!」


 と今度はレアがそう言ったのだ。

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