マルタン丘陵での戦い 第十七話
「彼女はどうやって攻撃を繰り出しているのかご存じですか?」
手を額にかざして目を細めた。視線の先の樹上でポルッカは右手を前に出し、その掌の先から閃光を放っている様にも見える。
「あれは全てが魔法ということではないらしいです。私もやり方を詳しくは教えて貰えませんでしたね。あまり言いたがらないのですよ」
レアが横に並ぶと同じように目を細めた。
「それは賢明だと思います。ですが、不思議というか。とにかく目を引きますね。飛んでいる物なのか光なのかを見る限り魔法射出式銃のようなものが見えますね」
「聞いたところまでなら、錬金術の応用だそうです。
彼女の一族の固有というわけではありませんが、ラーヌヤルヴィ一族は空気の密度を操るのが得意で、もはや一族固有の域に達しているそうです。
以前、銃で狙撃をするときにはそれでレンズを作りあげて遠距離をみていたそうですよ。
今使っているのは、間近で見たわけではないのですが、レンズで集光してそれを撃ち出しているんじゃないでしょうか。
でも、虫眼鏡みたいにする程度じゃあ、ああいう風はならないと思いますが……。しつこく聞いても教えてくれませんでしたね」
「魔石にそのような難解な魔術が組み込めるとは思えませんね。ほぼ一族固有なら杖が必須なはず。でも杖が見当たりません」
「あの機械の腕、一体何を埋め込んだのでしょうね。何というか……」
「スヴェリアの技術はイカれていますね……」
「スヴェリアの技術はイカれているわね……」
と二人同時に顔を見合わせてしまった。
ポルッカは相変わらず木の上から乱射し続けている。
しかし、彼女は遠くばかり見ていたせいで足下に敵兵が迫ってきているのが見えていない様子だった。
敵兵はまだポルッカの位置を特定しているがたどり着けていないようなのだ。だが、確実に迫っていたのだ。
「状況が安定したからと言ってあれは大丈夫なのでしょうか?」
それからすぐに、私が不安要素を言ったのが引き金になってしまったのか、連盟政府の兵士の一人が木の下までたどり着くと上にいる彼女に向けて発砲を始めたのだ。
狙いは悪く、木の上では無く上空に向かって撃っている。そのせいなのか、ポルッカはそれに気づかずに撃ち続けている。
「ポルッカ、回避行動を取りなさい!」とレアがキューディラ越しに叫んだことでやっと足元の敵兵に気がついた様だった。
しかし、移動するにはすでに遅く、身動きがとれなくなってしまったようだ。キューディラからポルッカの返事はなく、その代わりに何百匹の蜂が飛び回るような銃声が聞こえてきた。
そうしている内に、木の下に兵士たちは集まり始め、それに比例して銃弾の数も多くなり、ポルッカは放たれた下手な弾丸についに被弾してしまったのだ。




