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マルタン丘陵での戦い 第八話

 敵兵の分断作戦は道が二通りしかない為に簡単なもので対処できる。

 二つしかないうえに、お互いに距離が離れている。個別に対応した方が良い。


 まず、第一陣だ。


 分水嶺を越えた先にある歩行に適した尾根筋を進んでくる隊列を倒木により分断。

 分断した地点を両サイドから奇襲し敵兵の分散。前方は最後尾を動揺させ、そのまま尾根筋を進ませ、ユニオン兵士の待機する開けたところへ誘導。

 森の出入り口は一つであり、そこへ予め照準を合わせておき霧の中姿を見せない状態で一網打尽にする。


 後方は前方を足止め。さらに足止めに留まらず、さらに奇襲を掛けて恐怖を与え、先頭集団を反転させる。

 前から逃げてきた兵士と後方から進み続ける兵士たちを正面衝突させ、混乱に乗じて同士討ちをさせて進軍を阻む。


 第一陣はそれで良い。しかし、その頃には霧も晴れてしまっている。


 体勢を立て直し進んでくる第二陣は、第一陣分断の際に先ほどの倒木に爆薬を仕込み、進む為に倒木を処理をしようとした部隊が近接し密集したところで爆破。

 さらに発煙筒を焚き、霧よりも濃くなるほどにとにかく煙幕を張る。その煙に乗じて再び奇襲を掛ける。


 第三陣はおそらくルートを変えてくるだろう。だが、歩きやすいルートは二つの尾根筋以外にはほとんど無い。崖も多く、木々の生い茂り方も密度が高い。進軍は遅くなる。

 遅ければそれでこちらの出方が有利になる。


「そう都合良く行くだろうか?」


「何れにせよ、ルートはそこしかありません。索敵を広範囲に張ってください」


「簡単に言ってくれるな。だが、それが出来ない私ではない」と余裕に鼻を鳴らす音が聞こえた。


 指示出しをした後、ティルナが近づいてきた。


「カミュ、申し訳ないのだけど、ここでの指揮はあなたにお任せしていいかしら」


「何かあったのですか?」


「先ほどから起きている市街地での爆発についての不穏な情報が入っていて、市街地に潜入しているユニオン・共和国合同部隊に呼び出されました。

 何でも、連盟政府でも共和国でも、そしてユニオンでもない勢力が少数入り込んだそうです」


 私はそれが“彼”であることは何故かすぐに分かった。ここまで事態が動いてまだ出てこない方が不思議だったくらいだ。

 どういうつもりかは分からない、と言うことはない。彼はアニエスさんを助けに来たのだ。

 今後の成り行きでは相当困難な道のりを歩むことになるのは確かだ。


 だが、私の現場はここである。


 野暮なことを考えてはいけない。そして、大騒ぎを市街地で起こして亡命政府軍兵士をそちらに向けてくれたことには感謝しなければいけない。

 しかし、いったいどれほど派手に騒いだのか。兵士をほとんど動かすとは。

 今回も張り切っているのようですね、イズミ。


 思わず笑みがこぼれてしまった。


 それを見て「何かおかしいの?」とティルナは不安そうに私の顔を覗き込んできた。


「いえ、気にしないでください。ここは私に任せて、ティルナは市街地へ向かってください」


 ティルナは足早に山を下りて市街地へと向かっていった。

 彼女が森の木々に紛れて見えなくなったあと、私たちは敵の隊列の首を切る為に森の中へと入っていった。

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