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マルタン丘陵での戦い 第四話

「……私たちラーヌヤルヴィ家一族は裏切り者だからな。北公でも商会でも。

 ただ、心が属するのはかつてのスヴェリア連邦国、そして現在の第二スヴェリア公民連邦国だ。

 そこでは閣下の言葉が全てではあるが、裏に生きる者たちには相反する考えも必要だ。

 閣下の言葉は光溢れる表の世界でのあり方であって、それはそれを尊重すべきなのだ。

 影から国を支えると決めた者は、ただ一つだけ、国に尽くすという事さえを考えておけば良いのだ」


「相反した思想を持ちながらも国の為に動けるとは。あなたは裏で動く者としての適性は素晴らしいです。もちろん、嫌味ではありませんよ。

 私が尽くすべきは協会。あなたのように国家ではありません。第二スヴェリア公民連邦国だろうと共和国だろうと、そしてはたまた今まさに対峙している連盟政府であろうとも、利益を守る為に時と場合によりつく相手は変わります」


「殺しに程度や違いなど無い。ゼロは神聖にして脆く、一以上は全て同じだ。だから、どこか一つに尽くした殺しだからいいというわけではない。主が変わろうとも冷静に遂行できるあなたはさすがだ」


「こういう仕事を確実に遂行できる者がいて国は成り立つ。あなたもあなた自身を誇るべきです」


「それはお互い様だな。あなたのような者とイズミとかいうボンクラの折り合いが付くのが不思議で仕方ない」


 スヴェンニー特有の頑固な一族かと思いきや、理解はあるようだ。

 これまでよく話す機会は無く気がつかなかったが、もしかしたら私はポルッカと仲良くなれるかもしれない。


 彼女の先祖が子どもを殺したのは罪深く許されるものではないし、結果は惨憺たる物になったが、ラーヌヤルヴィ家も自国の発展を願ってかつて商会と手を組んだのだろう。

 なぜラーヌヤルヴィ家が裏切り者だのと言われているのか、それは勝者の立場になれなかったからなのだ。

 これまでの勝者であった連盟政府も光の当たらないところでは一体何をしてきたのか。かの聖なる虹の橋(イリスとビフレスト)の優秀さを見れば、考えるだけでも恐ろしい。

だが、それは歴史の表では語られることは無い。

 この戦いの勝者の側にラーヌヤルヴィ家が付けば、許されるわけではないが、語り継がれることは無くなっていくだろう。

 先祖の犯した罪が引き継がれるのは、罰が当たってしまえという被害者の願いだけで作り上げられるものではない。その贖罪をする機会も同時に与えられているのだ。


「さて、姫騎士殿。お前の後輩はデカい口きいていた割りに手こずっているようだ。向かってやれ」


「了解。場所の指示を」

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