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マルタン丘陵での戦い 第一話

 山岳地帯は静かな夏霧に包まれていた。

 背の高い木の根元を隠す草は、霧の中に濃い緑をぼんやりと浮かべている。

 豊かに茂った草とそれに纏わり付く霧のせいで五ヤードも見通しが利かない。しかし、それは体よく私たちを隠してくれる。


「敵の部隊は三ルートに別れて進んでいる。斥候だろう。だが、数が多い。ほとんど侵略開始したと思って良いだろう」


 耳に付けた小型のキューディラから割れたポルッカの声が聞こえた。


「侵略と言っていただけるのですね」


「私たちスヴェンニーが連盟政府にかつてされたことを考えれば、ヤツらがする行動は侵略以外の何ものでも無い」


 商会についたではないかと言うのは野暮だ。噛みついては面倒だ。私は言葉を抑え込んだ。

 しかし、「でもあなたたちは商会についたじゃない」とティルナの声が混じって聞こえた。すかさず「黙れ」とポルッカが吐き捨てるように言い返した。

 相変わらずティルナとポルッカは喧嘩ばかりしている。


「作戦行動中です。二人ともお静かに。ポルッカ、状況を」


 ポルッカは木の上から敵情を探っている。彼女は錬金術――北公では魔術工学者と呼ぶらしい。(そう呼ばないと彼女はキレるのだ)。錬金術で空気中の屈折率を操り、遠くを見通している。

 ただ見るだけではなく、光のハチョウをチュウシュツして温度やらなにやらだけを見ることができるらしい。

 私にはよく分からないが、とにかく千里眼の如く敵の全てを見通しているのだ。


「北東と南東の斜面に五人小隊がいる。いずれも杖持ち。

 南東の方は杖が無い奴が一人いる。おそらく剣士かなにかだな。森の中で剣を振るうなど、素人以下だな。

 草だとかをギリースーツにしている、が、色がまるで合ってない。私からすれば、丸裸というより、もはやほとんど目印だな。おそらく素人だ。

 両方ともダムに向かって真っ直ぐ進んでいる」


「了解。ティルナは南東の方へ」


 五人程度なら私一人で対処が出来る。しかし、今は目立ってはいけない。一人一殺でこちらも五人で向かった。

 五人は一列になって茂みの間を進んでいる。

 二人と三人で別れ、前方から二人、両サイド前方の左右から二人、そして最後尾に私が付いた。

 茂みを利用して近づくと、足音が聞こえてきた。森の中では襲ってこないと思っているのか、足音は抑えているが聞こえる。不用心にも枝を踏む音さえも聞こえる。

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