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マルタン芸術広場事件 第十六話

「あれ? 今の、魔法の感じ。知ってるなぁ。シバサキ統合団長の近くでときどき使われた感じに似てる。

 冷たいんだけど、北公のみたいにただ冷たいんじゃなくて人の心があるんだ。何か志みたいな裏がありそうな感じ」


 男は黙り込んで、何かを思い出すようにもう見えていない眼球を左右に動かした。


「もしかしてクロエさん、ですか? そこにいるんですか?」


 クロエは何も答えなかった。

 この男は連盟政府の魔法使いだ。そうと知っていたら治癒魔法をかけなかったわけではないが、もう少しやり方を考えるべきだった。

 例えば治癒魔法の魔石を押しつけて放っておくとか、そうすれば気づかれなかったはずだ。

 俺もまずさを感じ始め、自らのしたことでまた困難をもたらした罪悪感に押さえ付けられて何も言えなくなった。


「助けに来てくれたんだ!」と男は笑顔になると大声を上げ始めた。


「おおい! みんな、仲間が増えたぞ! クロエさんだ!」


 動かせるようになった右腕をバタバタと大きく動かし始め、必死に手を伸ばすと植え込みの木を掴んだ。そして、力の限り揺らし始めたのだ。

 すると中庭につながる廊下の方から足を音が聞こえ始めた。


 こいつはおそらくシバサキの部下だ。話の内容からおおよそヴァンダーフェルケの連中だろう。弾かれて落ちていた杖を拾い構えた。

 なぜこいつらがいる? というよりもこんな所まで入り込んで何をしているのだ!?


「ホラご覧なさい! あなたの甘さのせいですよ!」


「仕方ないですね。ですがとりあえず敷地内には入れました。多少暴れるのはもう構わないでしょう」


次から次へと黒い服の男たちが集まり、あっという間に取り囲まれてしまった。


「こいつらの黒い服……、やっぱりヴァンダーフェルケ・オーデンか?」


 そう言うとムーバリは、あっ、と声を漏らすとハッハッハと軽く笑い出して首筋をなで始めた。


「そういえば、イズミさん、今さらですが、閣下から“ハヤブサが怪しい”と忠告しろと言われていましたね」


「マジで今さらだよ! バカ!」


「バカはあなたでしょ!」


「クソ。否定できない」


 取り囲む黒い服の男たちは見つけるや否や無駄に突進してくるかと思いきや、皆杖を構えて同じ姿勢を取り警戒している。

 一部が左右にきっちり別れると隊長格の人が後ろから出てきた。


「我々は新たな指揮官の下、再編されたヴァンダーフェルケ・オーデンだ。貴様らは既に包囲された。抵抗は無駄だ」


 隊長殿はクロエの方へ振り向くとにっこり笑顔になった。


「クロエ氏、ご苦労であった。イズミをここまで誘導するのは大変だっただろう」

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