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マルタン芸術広場事件 第九話

光の球は弾けると緑や赤黄色オレンジなどの色とりどりの光の粒をまき散らした。

それはさながら花火のようだった。それが二、三発カフェの中で大きく弾けると、敵兵士の銃弾は止んでいた。

亡命政府軍は手榴弾を投げてくる気配は無い。魔力雷管式銃はあるのに妙だが、幸いだった。そこへ炸裂する何か、火花の色がやたら派手なのでおそらく花火が放り込まれたのだ。

投げ込んだのは亡命政府軍ではない。では一体どこが――。


動揺して戸惑っている兵士が次々と短いうなり声を上げて血を吐きながら膝から崩れ落ちていった。被弾の衝撃のまま前のめりに倒れたり、低い位置を撃たれ崩れたときに仰向けになり後ろへ倒れたり、肩を大きく回すように動かしたりしてそのまま倒れたりしている。


誰だ!? 誰が亡命政府軍を撃ってるんだ!? しかし、クソ! 人死にが出た!


いや、まだ間に合うか。俺は治癒魔法を掛けようとした。しかし、距離が離れすぎている。

このまま飛び出せば的になりにいくようなものだ。亡命政府軍を撃っている第三の勢力もいる。

飛び出して当てられるのはめっぽう構わないが、治癒魔法を掛けている間に囲まれてしまえば、相手を殺す様な魔法でしか状況を打破できない状態に陥るかもしれない。


誰かに撃たれた亡命政府軍兵士はまだ動いている。だが、出血も見えていて量も少なくない。


出るかどうか、悩み始めていると「イズミさん、こちらへ!」と声が聞こえた。聞き覚えのある男の声だった。


声の方は土煙が残り見ることができない。俺は再び兵士の方へと振り返った。


膝を叩いていると襟首を思い切り掴まれた。

再び「行きますよ、イズミさん!」と聞こえた。それを言ったのはクロエだった。


「まだ、まだあの兵士は生きてる! 放っておけない!」


クロエの腕を引き剥がそうと抵抗した。しかし、クロエは一般人よりも鍛えているのでやはり力が強く、虚しくも俺は抗えずに引き摺られてしまった。


そして、男の声のした方へと連れて行かれ、壁の向こうへと行った。

それとほぼ同時に隔てた壁に銃弾の当たる音が聞こえた。


「何やってるんですか!? 死にたいんですか!?」


クロエは襟首を落とすように離すとクロエは凄まじい剣幕で怒鳴った。


「さっき撃たれた兵士がまだ生きてる! 死んでない! 治療しなきゃ死ぬ!」


「お黙りなさい!」とクロエは俺を遮るように再び怒鳴った。

首が右に無理矢理曲げられる感覚と同時に、左頬に強烈な痛みが走った。


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