表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

1506/1860

不協和音 第三話

「直前の精神鑑定では問題なかったぞ?」


 マリークの動揺を見る限り、本当に様子がおかしかったのだろう。

 狙撃は精神的な安定を持ってして行わなければいけない。多少の動揺さえも弾道に影響を与える。

 私は姿勢を戻し机に肘を突いて前屈みになり、話を促すようにマリークを見つめた。

 マリークは唾を飲み込むと話を始めた。


「一昨日くらいに話したときに手が異様に震えてた。それだけじゃない。妙に大人しかったんだ。

 父親が死んだ後にも暗くなったが、あそこまで落ち込んだことは見たことが無かった。あんな状態でうまく銃を扱えると思えないんだ。

 彼の銃は自前のものだ。それも規制解除後に改造しまくった物だ。

 落ち着いてい扱うならまだしも、あんな状態じゃ危ない! 作戦行動をうまくいかせたいなら彼を止めるべきだ!」


 何だと。狙撃は私の合図と共に行う。合図の後でも怯えて撃たなければそれでいい。

 しかし、合図よりも前に、もしくは合図を無視して弾丸が放たれ、万が一にも当たってしまった場合は致命的であろうと無かろうと取り返しが付かない。

 故に絶対無比に正確な射撃を行わなければいけない。

 マリークの言う“あんな状態”を私は見ていない。私以上に普段からオリヴェルを見ているマリークに“あんな状態”と言わしめるというのはどれほど狙撃に対して最悪な状態であるか、考えるだけで恐ろしい。


「おい、マリーク。それはマジだな?」と視線を鋭くしてマリークを圧迫するように睨みつけた。


 マリークは怖じ気づくどころか、私に一歩近づくと「オリヴェルの親友の僕が言うんだ。間違いない」と瞬き一つせずに見つめ返してきた。


「いいだろう。わかった。お前を現地に送る。オリヴェルを止めろ」


 私はポケットから移動魔法のマジックアイテムを取り出し、ポータルを開こうとした。

 そのときドアがノックされた。誰かと思えばフラメッシュ大尉だった。


「フラメッシュ大尉、丁度良い。マリークを狙撃部隊の所まで送っていってくれないか?」


「奥方、申し訳ございません。私はこちらで用事がありまして」


「どうしても外せないか?」


 駄目押しの問いかけにフラメッシュ大尉は無言で頷いた。


「ですが、現地待機場所には女中部隊も数名控えております。彼女たちに案内させましょう」


「そうだな。マリーク、現地に着いたらあっちの女中部隊に事情を話してオリヴェルの所まで行け。時間が無いからポータル越しに私も事情を伝える。それで何とか止めろ」


 マリークは頷いた。一度自宅にポータルを開き、マリークの銃を取りに行かせた。(メンテナンスと称して女中たちに隠させていた)。

 その後、すぐにマルタンの待機場所へポータルを開いた。ポータル越しに女中たちに話を伝えるとすぐにマリークと共に移動を開始した。私はそれを見届けてポータルを閉じた。


 ポータルが閉じて静かになると「よろしかったのですか?」とフラメッシュ大尉が言った。


「現地の方が安全かもしれないからな。大丈夫だろ」


 フラメッシュ大尉は、そうですか、と言うと部屋の片付けを始めた。

 休みにしてはいるが、私の部屋が汚いことを知っていて休みであるなら片付けには丁度良いと彼女も軍部省に来ていたのだ。


 することもないので私も作業を始めたが、自宅に忘れ物をしていたことを思い出した。

 金融省も休みであり、シロークが家にいるのでキューディラでシロークに連絡を取った。

~銃の種類の補足~


魔法射出式銃……魔法を魔石からそのまま撃ち出す銃。銃身に魔力絶縁性のある金でライフリングされていて狙いは正確。発出音が小さい。使用魔石が強いため魔法使いが触ると相互作用を起こして薬室相当部が焼き切れて壊れる。金を使用するため高価。多量生産のため以前に比べれば安価。共和国市中警備隊標準装備。


魔力射出式銃……魔法の力で銃弾を撃ち出す銃。弾を撃ち出す力だけが魔法。ライフリング等、力以外は普通の銃と同じ。対魔防御を展開した魔法使いのバリア貫通に有効。使用魔石が強いため魔法使いが触ると壊れる。威力規制解除後、強い魔石を使用するようになったため薬室相当部が爆発する可能性があり危険。銃弾は、後方に金でコートした魔石を積むことで対魔バリア接触時に爆発を起こす銃弾も作成可能。安価で使い方次第で最強。


魔力雷管式銃……銃弾の火薬を魔法で炸裂させて銃弾を撃ち出す銃。火薬を着火させれば良いだけの魔石があればいいので、魔法使いが触っても壊れない。共和国軍標準装備。市中警備隊の魔力適正者の装備。


マリークの杖兼銃は魔法射出式銃だが、魔力が使用者供給型であり今のところ世界に一つしかない。

オリヴェルの銃は威力規制解除前の魔力射出式銃。正式な登録はされているが、魔力射出式の最大手カールニーク社の持ち物であるため威力は不明。


威力規制解除は、世界情勢による兵器市場の拡大予測からだけでなく金融省長官選挙でカールニーク社先代社長の自殺という結果を招いたユリナ軍部省長官の罪滅ぼしではと囁かれている。




連盟政府製の銃…… ?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ