銃を手に取る青年たちの目に映るもの 第三話
黙っているとオリヴェルは空を見上げた。初夏のグラントルアの空は青く、雲一つ無かった。
「マリーク」と呼びかけてきた。
「君は選挙の時、強硬派の家の子どもだったぼくをどう思っていたかい?」
「どうって言うのは難しいな。当時は僕は強硬派も和平派も何も分かっていなかった。
イズミ先生の魔法がすごくて、そればかりに夢中で、家が元々和平派だったし先生が和平を訴えたから和平派だった。
オリヴェルはそれに反対しているカールニーク家の子どもだから良くは思ってなかったけど、魔法の件でどうでもよくなった、かな」
――今思えば、それでよかった。とは言えなかった。
オリヴェルに比べれば大人たちの思惑によって窮屈な思いなどしていない。
彼の父親は強硬派であり、僕と親友であることを利用された。
そして、強硬派を掲げその候補を擁立していたメレデントは裏では帝政思想だった。
反帝政だったオリヴェルの父親はメレデントを支持していたことを恥じた結果が最悪なものになってしまったからだ。
悪いことばかりではなかったと思っている。思うようにしている。
僕はオリヴェルと親友になることが出来た。こうして陽の当たる懐かしいこの場所に腰掛けてのんびり話しをすることが出来るのは、少なくとも僕にとっては幸せなことだ。
オリヴェルとの友情に、その最悪の結果が全く影響していないかと言えば、心のどこかで罪滅ぼしをしなければと言う感情も少なからずある。
「イズミ先生か。懐かしいな。先生は元気なのかい?」
「元気みたいだ。だけど、あっちこっちでいろんな事に巻き込まれて身体も傷だらけだよ。
この間あったときは左腕が機械になってたよ。それでも和平を求めて止まることなく進んでいるよ。
あんな風になっちゃ、もしかしたら僕なら諦めていたかもしれない。
それに、先生はまた巻き込まれているよ。今回の件もね」
「アニエスさんか。先生の奥さんだったかい?」
「まだ籍は入れてないみたいだけど、そうだね。僕も何回か会ったことがある。エルフじゃないけど、賢い人だった。エルフである僕たちにも屋敷の女中にも、優しかった」
「そうか。そんな人を僕たちは殺そうとしているんだね」




