銃を手に取る青年たちの目に映るもの 第一話
僕とオリヴェルは狙撃部隊に志願し、審査も通ることが出来た。
僕は母親がギンスブルグ家であり軍部省の長官であることで、オリヴェルはその僕と親友であることが決め手にもなったのだろう。
ほとんどコネで入り込んだというのに等しいだろう。
だが、僕もオリヴェルも狙撃の腕に関しては、同い年で銃を持っている他の者たちよりも、それどころかそこいらの銃を持ったことのある大人よりも一つも二つも頭が出ているという自信があった。
両親や友人という下駄がなかったとしても、僕たちは審査に通れただろう。
正規兵ではなく、傭兵扱いだ。年齢的なもので現地では雑用ばかりだろう。
だが、それでもいいのだ。僕は本当の目的が別にあるからだ。
現場に潜り込み、イズミ先生がその隙にアニエスさんを助け出すために、狙撃のタイミングをほんの少しずらすのが僕の本当の目的なのだ。
だから、現地についても仮に雑用係であろうと狙撃が出来ない観測手の助手であろうと構わない。
僕には杖がある。先生たちが授けてくれた魔法射出式銃としても使えるこの杖さえあれば隙を作れるはずなのだ。
僕は杖を強く握りしめた。すると銃身が冷たくなった。
「マリーク、君は自分の銃を持っていくんだろう?」
隣にいたオリヴェルが冷えて霜が降りた僕の銃を見ながら尋ねてきた。
オリヴェルと僕は軍の事務所で説明を受けた帰りに公園に寄って話をしていた。イズミ先生がオリヴェルたちに魔法を見せ、そして僕に魔法を初めて使わせたあの公園だ。
あのときと全く変わっていない。大きな樫の木も、先生の杖を持って駆けまわった青い芝生もあのときのままだ。
だが、改めてくると、何もかもが小さくなった気がするのだ。
あの樫の木はもっと空を覆っていたし、芝生も駆けまわるには狭いような、そんな気がするのだ。
街中なのに銃を携行して歩くことを義務づけられた僕たちは、もうあの頃とは違うのだ。
オリヴェルの問いかけに、ああ、と頷いた。
「そうだね。僕は自分の物があるからね。魔法射出式銃だよ。威力は申し分ないよ」
銃を立てて銃口を上に向けた。
イズミ先生がこの間リミッターを外してくれた。撃たせたくないはずなのになぜ殺傷も可能な状態にしてしまったのか。
先生は僕に攻撃ではなく守る為にその引き金を引いて貰いたいと願ったからだ。
それは先生が僕を信頼したからではない。
信頼はそれが揺らぎそうな状況を打破して初めて得られる物だ。これまでの僕の銃――氷の飛び出る玩具では、先生との信頼を築く以前の状態だったというわけだ。




