叛国の徒、突入に至るまで 第七話
「ですが、私には譲れない条件があります。
あなたが私の目的に賛同するつもりなら、救出後に皇帝の身柄は私たちが確保するということまで理解していただかなければいけません。それも、安全な状態で、です」
「それは気に入らないな。身柄確保後に皇帝としての立場を最大限利用するつもりなんだろ?
身柄を確保するのは“私たち”ということはお前個人ではなく聖なる虹の橋が確保するってことだな?」
「そうです。皇帝の身柄を連盟政府がおさえるのは、十三采領弁務官理事会が機能不全に陥っている現状では、拘束を任されたどこかの自治領軍によって単独の利益追求の為に勝手に利用されるなどのリスクがあります。
そこで、個人単独ではなく国家全体の利益を得る為に利用できる私たち聖なる虹の橋が、連盟政府所属でありながら政府からは独立的に身柄を確保しなければいけないのです。
私たち聖なる虹の橋は皆ある程度同じ方向を向いています。上司と折り合いが悪いおかげでまとまっているんです」
「利用することには変わりないな。一個人の私利私欲じゃなくて国家の利益のためって言えばよく聞こえるのは不思議だな。
だが、何れにせよとにかく生きて助かりさえすれば良いんだ。安全かつ平穏で、拘束的でない身柄の確保、いや確保じゃなくて保護にしろ。
それに加えて、お前らが身柄を確保した後にシバサキには近づかせるな」
「それは当たり前の前提以前です。彼が社会的混乱を巻き起こす可能性もありますし、人格的に問題を起こしますからね。
ですが、彼は今回の件には興味が無いのか今のところ大人しいので、何もしないでしょう。
皇帝は私たち聖なる虹の橋が万全を期して確実に安全な状態で保護致します。
おそらく身柄確保について知るのは私含め数名のみで連盟政府中枢に知らせることはないでしょう。その後の扱いは状況次第です」
「信じるぞ」「お任せを」
クロエを真っ直ぐに見つめて尋ねると、深い確かな頷きが返ってきた。
「さて、当日はどうするつもりですか?」




