叛国の徒、突入に至るまで 第六話
「連盟政府の誇る諜報部、聖なる虹の橋が共和国の者と手を組んで行動を起こした。
その一方で聖なる虹の橋はレッドヘックス・ジーシャス計画でマルタンの亡命政府に深く入り込んでいる。
共和国の市中警備隊と行動を共にして市街地で暴れていたことが公になれば、後に連盟政府にも亡命政府にも顔向けが出来なくなる。
聖なる虹の橋は連盟政府内部で完全に孤立。
シバサキは言うことを聞かない私たち聖なる虹の橋をこれ幸いと切り捨て、ヴァンダーフェルケ・オーデンとか言う部隊をさらに大きくして権利を拡大する。ということですね」
「さすがだな。冷静に分析できてるな」
「バカにしないでくださいませんか。私は本来は情報処理部門と言うことをお忘れですか? ですが、なぜそれを着る必要があるのですか?」
「そうだな。背中を預けようとしてるんだから、それは知っておいてもいいか。だけど、説明が長くなるから面倒なんだよな」
俺がそう言いながら面倒くさそうに後頭部をかくと、クロエは表情を明るくした。
「省いてしまっても構わないような程度の説明なら、あなたがそれを着ていかなければいいのではないですか?
アニエスさんを救いたいあなたには、行かないという選択肢は絶対無いのですから、あなたが着なければ私たちも喜んで手伝い致しますよ。
その方が作戦参加人数も増やせるので救出確率も上がりますよ?」
「相変わらず、隙あらば優位に立とうとするな。さすがだ。
でも、まぁ、そうか。それなら、他を当たるわ。お前が割と優秀だから声かけたんだけど、他にも仲間はいるからそいつらに頼むわ。
その代わり、この間言ってた帝政ルーアを利用した共和国との和平の道のりは完全になくなると思え。
連盟政府をガン無視して俺のやり方で帝政ルーアと共和国を和解させる。ただエルフの国で起きた内乱というだけで話を完結させて、そこに連盟政府の関与は一切無かったことになるだけだ。
簡単だろ。エルフの皇帝は他でもない、俺のアニエスだからな」
そうしたところで邪魔をしてくるのは明白だが、少しでも手間を掛けさせてやる。
亡命政府の件に関して連盟政府が全く手を出さずに解決してしまったなど、交渉の重要なカードたり得る亡命政府に今後も積極的に干渉をしていきたいこいつらが許せるわけがないのは分かっている。
さぁ言ってみろ。お前一人でも、お前一人だけで参加すれば仲間はずれにはしないんだぞ。
「……仕方がありませんね」
舌打ちをしたが、意外にもクロエは素直だった。




