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迷える羊飼いとギンセンカの乙女たち 最終話

 ティルナと再びレアとポルッカの待機する場所まで向かった。


「レア、お待たせしました。ご希望通りにルカス大統領には音声魔石で録音したものは全て聞かせました」


「そうですか。私たちの意向もお伝えしましたか?」


「山岳での作戦への参加ですね。伝えました。ですが、まだ認められません」


「まだ、ということは可能性はあると言うことですね?」


「そうです。あなた方が裏切る可能性について問われることは、あなた自身が理解していると思うので、それがないか否かについては一度置いておきます。

 私たちは戦力が必要です。あなた方はそれに見合う戦力があるかどうかを示していただかないといけません。

 レアは移動魔法が使えますね。ですが、それを不測の事態が発生した場合以外に戦闘で使用することはありません。魔法以外での戦闘についても申し分ないと思います。

 ですが、ポルッカ・ラーヌヤルヴィさん、あなたはどういった戦い方をするつもりなのでしょうか?

 あなたは錬金術師と伺っております。ですが、杖をお持ちではないようですね。確か、黒檀の杖を持っていたはずですが?」


「杖など持つ必要はもう無い」


「杖を使わずに戦うと言うことですね。つまり魔法は使わない、と。あなたは優秀な狙撃手とも伺っております。ですが、銃もお持ちではないようですね。こちらが銃を安易にあなたにお貸しするわけにはいきません」


 ポルッカは左腕を上げた。袖がするりと落ちると、埃の幾何反射の中で機械の付けられた左腕が露わになった。

 掌を動かすと小さな歯車がかみ合いたくさんのバネを弾くような音がした。


 それを見つめながら「私にはもはや銃さえも必要ない」と言って金属の拳を握った。


「では、どのように戦うのですか?」


 尋ねると天井を向いた。天井のさらにその先にある無限遠に焦点を合わせている。


「戦い方はあるが、残念ながらここでは披露出来ない。やろうと思えば出来るかもしれないが、出力が足りない」


「具体性に欠けますね。味方となるなら戦力や戦法は把握しておかなければいけません。今回は奇襲でも無いので味方を欺く必要もありません」


「味方だと?」と言うと睨みつけてきた。


 レアはため息を溢すと「ポルッカ、止めなさい」と止めようとした。しかし、ポルッカは立ち上がると私の方へと真っ直ぐ向かってきた。目の前まで来ると顎を上げて睨み上げてきた。


「私はお前たちの為に戦うのではない。我が一族と我が同胞、そしてカルル共事長の偉大なる未来への旅路が危機にさらされる可能性が高いから、こうしているだけだ」


「そうですか。そうまで言うのならよほど自信があるようね、ブランバットの裏切り者さん」とティルナが噛みついた。


 ポルッカは勢いよく振り返り「ブランバットは貴様だ!」とティルナに詰め寄った。


 ティルナもティルナで首を傾けて視線を逸らし「そうね。姉妹仲良くやりましょう」と挑発的に言った。


「二人ともいい加減にしなさい。とにかく、二人には前線に参加していただきます。ポルッカさん、あなたは狙撃手でしたね。銃を渡せませんが、双眼鏡で遠くを見る監視係をしていただきます。構いませんね?」


「いいだろう。この混血どもに私の実力を見せてやる」


 ポルッカは顔の前で拳を作り、強く握りしめた。

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