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迷える羊飼いとギンセンカの乙女たち 第二十九話

「新通貨発行への焦りの原因を知っているとはな。このレアという商会所属の商人にも焦りがあるようだが、我々とは方向性が違った焦りだな」


 ルカス大統領は執務机に肘を突き、顎を弄った。


「商会での新たな指令が、グルヴェイグ指令と言う名前までついているというのは驚きましたね。

 どこかの地下組織の犯罪かと思っていました。

 確かに、それにしては規模が大きいとは思いましたが、まさか商会主導とは思いもよりませんでした」


 私の言葉にルカス大統領は困ったように頷いた。


「ですが、安易に信じるわけにはいきません。

 確かに、新通貨発行を急務にした原因となっている事柄を言ったのは衝撃的でしたが。それこそスパイではないのですか?

 それとも、情報攪乱の為に自覚無く放たれたか、もしくは意図的に攪乱しに来たか、と言う可能性もあります」


 ティルナは調書に書かれた内容を目で追っている。


「私は彼女の親友で信じたいという気持ちはありますが、お互いに職務には真っ当なので確実にスパイでは無いとは言い切れないですね」


「なるほどな。どちらも、確かに。しかし、このレアと言う名前。どこかで……」


 ルカス大統領は顎を押さえていた掌を動かして、今度は口を押さえ始めた。何かを思い出すように視線を左右に動かした後、ああ、と何かを思い出したような声を上げて身体を起こした。


「そうだ。イズミ君が借金を踏み倒そうとしているから身柄を引き渡せと連絡を寄越してきた商人が同じ名前だったな」


「細かくは聞いていませんが、イズミは確かにレアに借金がありました。ですから、その本人ですね」


「だが、あのとき彼はユニオンにはいなかったぞ?」


「レアはそれを知っていました。イズミを商会の追っ手から守る為に意図的に目立つようにユニオンに連絡したそうです」


「またイズミ君か。だが、その後のごたごたも彼が起こしたようなものだからつながっていてもおかしくはないな」


「しかし、レアさんは何故イズミさんを庇ったのですか?」とティルナが調書を机に置くと尋ねてきた。


「天然で移動魔法が使える手駒と敵対せずにキープしておきたかった――」


 ルカス大統領もティルナも納得したように両眉を上げた。

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