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迷える羊飼いとギンセンカの乙女たち 第二十三話

 分水嶺の近くまで行くと標高はかなりのものになった。夏も近いというのに肌寒ささえ感じる。

 時折触れる植物の葉は緑の色が濃く、むっくりと硬く膨らみのあるものが増えてきた。植生も針葉樹林になってきたようだ。

 道中で枝や葉をかき集めて作ったギリースーツを身につけ、木に登り連盟政府側を伺った。

 航空写真で見たときよりも切り倒された木々は多くなり、そこに出来た広大な広場にはもはや隠す気配すらなく軍の基地施設が置かれていたのだ。兵士も隊列をなして歩いている。


「想定していたより規模がだいぶ大きいわね」とティルナは双眼鏡を覗いたまま眉をしかめた。


「こちらの戦力はどれくらいなのですか? 私たち101部門だけでやるつもりだったけど、厳しい様子ですが」


「まずは大統領に報こ……ッ」


 下方に見えていた百ヤードほど先の茂みが不自然に動いたのを見つけて、私はティルナの口に手をかざした。

 そのまま抱き寄せるように顔を近づけて、目配せで茂みを指した。


 ティルナが視線をそちらに向けた後に、私の顔へと向けるとウンウンと頷いた。

 私は手を離して(報告は少し後回しにしましょう)と耳元で囁いた。


 息を殺して茂みを見張り続けた。

 辺りを警戒しているのか極力音を立てないように動いているが、野山を日常的に歩き回る動物のように軽い身のこなしではない。時折枝を避ける仕草をしているせいで掌が見え隠れしている。

 どうやら鹿や熊などの動物ではなく、人間のようだ。それも二人組である。


 次第に近づき、私たちの隠れている木の下を通り抜けた。どうやら国境を越えてきたようだ。

 ヒミンビョルグほどではないが険しい山道を登り、さらに連盟政府側は軍が集結している中をくぐり抜けてくるなど、連盟政府から密入国したただの一般人――私がユニオンに入るときに見たような者たちである可能性は低い。

 それどころか、かなり体力がある者たちであるのは間違いない。

 こちら側がこうして斥候を送っているのだ。連盟政府側の斥候である可能性も充分にある。


 ティルナに目配せをして二人の後を尾けることにした。

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